夫婦生活の終わりに待つのは、明るい未来か、それともどん底か――。熟年離婚は珍しくなくなった今、長年連れ添った関係を解消する決断には、感情だけでなく老後の経済や生活設計までもが大きく影を落とします。
「あなたといると息が詰まる」結婚40年、〈年金月25万円〉65歳夫に三行半を突き付けた専業主婦の妻。離婚半年後、元夫のSNSで悔し涙が止まらないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

月13万円、減り続ける貯蓄…不安からパートを始める元・専業主婦

「あなたといると、息が詰まるの」

 

鈴木春子さん(62歳・仮名)。40年間連れ添った夫の昭夫さん(65歳・仮名)に別れを告げたのは、夫が定年退職して半年ほどの月日が流れた頃でした。

 

昔ながらの亭主関白を地でいく昭夫さん。会社人間だった夫が毎日家にいるようになり、春子さんの行動一つひとつに口を出す生活は、耐えがたい苦痛以外の何物でもありませんでした。

 

「子どもたちも独立した。これからは自分のためだけに生きたい」。その一心で、春子さんは離婚を切り出したのです。

 

「離婚したって、年金を分割してもらえるから生活は大丈夫だろう」。そんな甘い見通しを立てていました。昭夫さんは一部上場企業に勤め上げ、年金は月25万円ほどもらえると聞いていたからです。財産分与として、当面の生活費として現金300万円を受け取り、春子さんは長年の夢だった一人暮らしをスタートさせました。

 

しかし、現実はあまりにも過酷でした。年金分割で手にする年金は、思い描いていたよりも少ない、額面で月13万円ほど。そのうち、春子さん自身の年金は月額にして約7万円。長年専業主婦だったため、厚生年金の加入期間はほとんどありません。年金だけで生活することは難しく、貯蓄を取り崩していく必要がありました。

 

しかし減っていく貯蓄額を見ては不安に襲われるようになり、時給1,200円ほどの清掃のパートを始めました。専業主婦だったため、家事以外の労働は新鮮に感じられたものの、この先ずっと働き続けなければならない未来に絶望感を抱くことも。

 

そんなある日、娘から見せられた元夫のSNSが、春子さんの心をさらに深くえぐりました。そこには、釣り上げた大きな鯛を手に満面の笑みを浮かべる昭夫さんの姿や、旧友たちと温泉旅行を楽しむ写真が、これみよがしに並んでいたのです。

 

「自由の身だ! これからは自分のためだけに金と時間を使うぞ!」

 

投稿には、そんな自由を謳歌するコメントまで添えられていました。

 

「私が40年間、家事と育児に尽くしてきた時間は何だったんでしょう……あの人が悠々自適に暮らせるのは、私が家庭を守ってきたからではないですか?」

 

自由になったはずなのに、心は金銭的な不安と元夫への嫉妬でがんじがらめ。悔しさと情けなさで、夜な夜な涙が止まらないといいます。