「エアコンは不快で高い」というイメージから、他の冷暖房器具が選ばれることも少なくありません。しかし、その常識が光熱費を増やし、健康リスクにさえ繋がっている可能性があるようです。本記事では、一級建築士の松尾和也氏の著書『間違いだらけの省エネ住宅』(日経BP)より、エアコンにまつわる多くの「勘違い」について解説していきます。
日本の冬の家、CO2濃度は“基準値の5倍”…「灯油ファンヒーター」が、欧米では“自殺行為”にも見える、あまりに危険な理由【一級建築士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

多くの人が信じる「エアコンは高くて不快」

□気密を高めればエアコンの風量を抑えられる

□エアコンは光熱費が安い

□ファンヒーターが出すのは水分だけではない

 

空調とは「空気調和」の略です。大きく分けてエネルギー消費量が多い順に暖房、冷房、除湿、加湿の4大要素があります。世の中にはたくさんの冷暖房機器があり、エアコンはこの4大要素のうち加湿以外の3要素を兼用した超多機能設備なのです。

 

エアコンは暖房、冷房、除湿のすべてにおいて、他の様々な冷暖房設備よりも光熱費が安く上がります。3要素すべてで1位です。そもそも冷房に関しては特殊な設備を除けばエアコンしか存在しません。また、その他多数の暖房器、加湿器、除湿機を見渡すと、加湿器と除湿機にこそ空気清浄機能を兼ねた製品がたくさんあるものの、暖房や冷房を兼ねた製品はほぼ存在しません。

 

本来なら、これだけ多機能かつ超省エネなエアコンは、超高価でも当たり前なのです。しかし、日本の住宅性能が低いが故にニーズが高く、2024年に約930万台も出荷されています。その量産効果によって6畳用の普及機種なら5万円からと超低価格となっています。そんな夢の設備機器がエアコンなのです。私はよく講演で「ドリーム空調機」と言ったりもします。要するに超優等生なわけです。

 

資料:松尾和也
[図表1]空調機器の機能。エアコンはこの4大要素のうち加湿以外の3要素を兼用している。ダイキン工業のうるさらには加湿機能がある 資料:松尾和也

 

超優等生であるにもかかわらず、人によっては「風が嫌」「乾燥する」「光熱費が掛かる」「冷房が嫌い」と悪の権化のごとく嫌っています。それだけならまだしも、工務店にも嫌う人がたくさんいます。エアコンをけなす側に立ったほうが一般受けするのだから、本当に最悪の状況です。