(※写真はイメージです/PIXTA)
マンションには暖かい住戸がある
次に共同住宅です。1999年基準を満たしている比率は13%×45%=5.85%となります。しかし、マンションには基準を満たしていなくても暖かい住戸があります。
「マンションが暖かいのは鉄筋コンクリート造だから」と言う人がいますが、それは違います。マンションが暖かいことが多い最大の理由は「上下左右が部屋に囲まれていることが多い」からです。もう1つは「木造住宅に比べると、特に配慮しなくても気密性能が高くなっていることが多い」からです。
ですので、最上階や角部屋に住んでいる人は決してそれほど暖かいわけではありません。一部のマンションデベロッパーにはこのことを燃費として表示するところも出てきました。イメージではなく、きちんと燃費で性能の違いが語られているのです。
このように、マンションは住戸の条件によって暖かさが違ってきます。基準に適合していなくても暖かい住宅があるのです。その条件は、「南向き」「複層ガラス」「中部屋」と考えています。
まず、「南向き」について説明します。
マンションの場合は玄関側が共用廊下、リビング側がバルコニーとなっていてバルコニーがある一面でしか採光が取れないパターンが多くなっています。この場合、バルコニーが南向きかどうかで日射によって入ってくる熱量が大きく異なります。また南に向いている場合、バルコニー自体が夏の日射遮蔽にも役立つので夏も東向きや西向きに比べて涼しくなります。これらのメリットがあるからこそ、「南向き」は一般的に高額で評価されることになります。当たり前と言えば当たり前ですね。
では、マンションの南向き比率がどのくらいか、ということを某マンション検索サイトで調べてみました。対象は7000件。検索項目に「南向き」とチェックを入れて調べた結果、該当した比率は約64%でした。
次にマンションにおける「複層ガラス」の採用比率を調べてみました。少し古いデータですが、2013年の住宅・土地統計調査によると、共同住宅の住戸で、すべての窓に複層ガラスがついている比率は約6.5%でした(板硝子協会が示す資料では複層ガラスを取り入れて建設する共同住宅における面積比率は80.2%(2023年)なので近年は増加しています)。いくら上下左右が囲まれているとはいえシングルガラスだと冷輻射が強烈で「暖かい」とは言いがたい状況になってしまいます。複層ガラスであることは重要です。
次に「中部屋」の比率も調べてみる必要があります。適切な資料がなかなか見つからないので推測してみました。
こちらもやや古いデータですが、東京都が2013年にまとめた「マンション実態調査結果」を基に分析したところ、1棟当たり18.4戸となります。100戸以上のマンションを100として計算していることもあるので仮に20戸/棟として考えてみます。20戸のマンションを1フロア4室の5階建ての図表3のような住戸配置とすると、中部屋比率は40%になります。最下階は下に部屋はありませんが、中部屋として差し支えないレベルの暖かさと判断しました。
暖かい住宅で暮らしているのは6人に1人
以上で、知りたいデータがすべてそろいました。マンションにおいて暖かいと言える条件を掛け合わせていくと、0.7%という結果になりました(共同住宅45%×南向き64%×複層ガラス6.5%×中部屋40%≒0.7%と計算しています)。
1999年基準を満たしている戸建て住宅6.89%とマンション5.85%に、追加の0.7%を足し合わせると13.44%という結果になりました。既存住宅の6500万戸にこの比率を掛けると873万戸にすぎないという結果が浮かび上がります。
また13.44%という割合を1億2400万人に掛けてみると、1667万人という結果になります。ただ、北海道で暮らす520万人は、ほとんど全館暖房で暮らしています。この520万人×(100−13.44%)=450万人も暖かい住宅に暮らしており、上記の1667万人から漏れているのでこの人々も足し合わせると2117万人が今現在、最低限の暖かさを保てる住宅に住んでいると言えそうです。
ということは大体最低限の住宅の暖かさを知っている人は、6人に1人くらいという感じになります(実際には、青森を中心とした北東北は全館暖房比率が高いです。それらの地域は割愛しています)。
また北海道の全館暖房による520万人が体感している暖かさと、全国の計算結果から出た約1700万人の暖かさはかなりレベルが違います。北海道の全館暖房は全館24℃といった非常に高い室温で生活されている人が多いからです。
