30代未婚者の半数以上が親と同居──。これは、現代日本における、もはや珍しくない家族の形です。しかし、親世代が定年を迎え、セカンドライフへ移行する時期と重なることで、これまで見過ごされてきた“静かな問題”が表面化しはじめています。本記事では片山さん(仮名)の事例とともに、親子が円満に次のステージへ進むための、新しい向き合い方をFP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が提案します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
いつまで子育てが続くのでしょうか…「年金27万円」60代両親の悲痛な叫びに、実家暮らし・月収33万円の30歳次男はきょとん。「なにが悪いの?僕は貯金1,000万円」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

32歳・未婚の息子が家にいる…穏やかな老後を送る夫婦の“静かなストレス”

65歳で定年退職した片山純一さん(仮名/67歳)。妻の洋子さん(仮名/65歳)も年金を受け取りはじめ、夫婦二人の年金額は月27万円。30年ローンを組んだ一軒家の返済も終わり、ようやく訪れた穏やかなセカンドライフに、胸を膨らませていました。

 

しかし、一つだけ想定外が。32歳になる次男の誠さん(仮名)が、いまだに実家から出ていかないのです。

 

35歳の長男は、大学卒業後に家を出て、30歳で結婚、すでに自分の家族を持っています。

 

一方の誠さんは真面目な性格で、大学卒業後は中小企業に就職し、問題なく10年近く働いています。月収は33万円。休日はインドア派で、自室で趣味に没頭する、物静かな青年です。

 

父の純一さんが「もう大人なのだから」と独立を促しても、誠さんは「なにが悪いの? 実家を出ると将来が不安だし、二人にとっても僕がいたほうがなにかと安心でしょ?」と、まったく出ていく気配がありません。

 

事実、誠さんは毎月5万円を家に入れ、趣味に数万円使う以外は堅実に貯蓄を重ね、その額は1,000万円に達していました。

「自分の時間を作りたい」親のストレスは限界間近

純一さんが夢見ていたのは、妻の洋子さんと二人で趣味や旅行を楽しむ、のんびりとした暮らしでした。しかし、息子が同居することで、洋子さんの家事の負担は現役時代と変わりません。炊事、洗濯、そして時には息子の部屋の掃除まで。

 

退職して家にいる時間が増えた純一さんの耳に、洋子さんの「いったい、いつまで子育てをしたらいいのかしら?」という愚痴が、日に日に重く響くようになります。

 

夫婦二人で過ごしていても、息子の存在が心のどこかに引っかかり、純一さんの心には常にもやもやとした感情が渦巻いていました。