内閣府「高齢社会白書」によると、7割以上の高齢者が「自宅で介護を受けたい」と答えました。介護施設に対する独特な雰囲気のイメージからか、まだまだ自宅介護を望む人が多いようです。ただし、自分の都合だけを考えると、家族関係に致命的な亀裂を生んでしまう危険性があります。介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、とある親子の事例をもとに解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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「老人ホーム・介護施設」の実態
高齢者向け老人ホームの利用者は年々増加傾向にあります。厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題・論点について」によると、もっとも利用者が多いのは特別養護老人ホーム(約64万人)で、有料老人ホーム(約61万人)、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・約28万人)と続きます。
まず特別養護老人ホームは、要介護3以上の高齢者が生活できるよう「食事」や「入浴」「排せつ」など身の回り全般にわたるサポートを提供している施設です。24時間スタッフが施設に在中しているため、安心して過ごすことができます。一般的に居室にはキッチンや浴室は設置されていません。また、社会福祉法人などが運営している公共性の強い施設です。
次に有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、特別養護老人ホームやグループホームとは違い、要介護認定を受けていない自立した人も入居が可能です。そのため行動の制限がなく自由に日常生活を送ることができる施設も多く、なかには老人ホームから会社へ出社している人もいます。また、茶道や華道などレクリエーションが充実している施設も多いようです。
最後にグループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症を患っている要支援2以上の高齢者(認知症含む)が利用できる施設です。こちらの施設もスタッフが24時間在中しており、主に介護が必要な人が利用しています。主なサービス内容は、利用者の健康管理や介護、生活支援です。
とはいえ、実際には「自宅で介護を受けたい」と考えている人も多いようで、内閣府「高齢社会白書」によると、介護を受けたい場所として「自宅」と答えた人は73.5%にものぼりました。