内閣府「高齢社会白書」によると、7割以上の高齢者が「自宅で介護を受けたい」と答えました。介護施設に対する独特な雰囲気のイメージからか、まだまだ自宅介護を望む人が多いようです。ただし、自分の都合だけを考えると、家族関係に致命的な亀裂を生んでしまう危険性があります。介護施設での勤務経験もある株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、とある親子の事例をもとに解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
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親子の「その後」
特養に入居した茂さんは最初こそ不機嫌でしたが、丁寧なスタッフの介護もあり少しずつ笑顔が見られるようになりました。今では穏やかで落ち着いた日々を送っています。
一方、明子さんは失業給付を申請しました。また、自治体独自の制度も活用しながらパートタイムではありますが再スタートを切り、心身の状態を整えながら徐々に余裕を取り戻しています。
今回のケースでは父親から介護を求められた社会人の娘さんが有給や介護休暇を利用し、離職をせずに介護を続けようとしました。しかし、各種サービス・保険を利用しない介護には限界があります。
親子どちらかに介護保険制度に関する知識があれば、違った結果になったかもしれません。
親のために仕事を辞めて介護をすることは親孝行ですが、離職により収入がなくなってしまい、将来の年金も減ってしまいます。
再就職しようとしても、離職前のような収入を得ることが難しい場合もあります。できる限り離職をせずにさまざまな制度やサービスを活用するようにしましょう。
介護について情報が必要な場合には地域包括支援センターや近くの介護事業所へ相談してみてください。1人で悩みを抱え込まず、くれぐれも周囲に助力を求めましょう。
武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役