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母親に拒絶される
そんな暮らしが、ある日突然終わりました。
その日、朝から母親が家にいませんでした。買い物にでも行ったのだろうと思っていましたがその日はついに帰らず。翌日の朝9時に玄関のチャイムが鳴りました。Mさんが出ると、無表情の男性が3人。身分証でわかったのは3人は警察官だということ。
「お母様の安全確保のために、しばらく保護します」と告げられました。なんのことやらわからず、呆然と立ち尽くすMさんに、警察官は続けます「あなたから度重なる金銭の要求や暴力があったと、知人を通じて相談がありました」。
Mさんはとっさに言い訳を考えましたが、言葉が出ませんでした。母親に暴力を振るった覚えはありません。ただ、大声をあげたり、壁を蹴ったり、生活費を強く求めたりしたことは確かにありました。あと、包丁をちらつかせたことも何度か……。けれど、まさか警察沙汰になるとは。
知人とは誰なのか。きっと母親の友達なのだろう。母親は被害届を出していないものの、息子のあなたから「避難」しなければならない状況なのだと、警察官は厳しい口調でMさんにいいます。
「あなた、働きなさい。まだ若いんだから」自分よりも10歳ほども若く見える警察官に、そういわれてしまいました。
数日後、弁護士を名乗る人物からも連絡がありました。電話口の声はどうやら年配の男性です。警察官と同じように感情のない淡々とした口調です。
「お母様の代理人としてご連絡いたします。これまで受け取られてきた金銭については贈与税の申告をしてください。また、世田谷のご自宅は売却手続きに入りますので、再来週までに退去をお願いします」
Mさんの目の前は真っ暗になりました。
贈与税? あれは借りただけだろう。税金を払うような現金はない。さらに家を売却? オレはどこに住めばいいんだ……。
Mさんは電話で大きな声を出してしまいました。「母の年金で生活してなにが悪い! お前らにオレの気持ちがわかるのか!」と叫びましたが、弁護士は無感情に「そのようなお話についてはこちらでは対応できません」と告げました。
まるで、自分が社会不適合者だといわんばかりだとMさんは感じてしまったのです。