現役時代、身を粉にして働き、潤沢な資産を蓄えた男性。念願の“隠居生活”で待ち構えていたのは、思いもよらない「老後の罠」でした。息子に経営権を譲った70歳元経営者の事例から、高所得者が老後に陥りやすい「家計破綻」の落とし穴とその対策をみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
お前の会社で働かせてくれ…「年金月7万円」「貯金8,000万円」社長の座を息子に譲った70歳元社長、引退後わずか2年で「息子に頭を下げた」まさかの理由【CFPの助言】
元経営者が陥った「家計破綻」の落とし穴
誠一さん(仮名:70歳)は、2年前まで埼玉県のとある市で建設業を営んでいました。現在、事業は息子の亮太さん(仮名:45歳)が承継し、誠一さんは隠居の身です。
誠一さんは高校を卒業後、地元の建設会社に入社。その後、25歳で個人事業主として建設業を始めました。良い時も悪い時もありましたが、徐々に事業を拡大させます。持病の悪化をきっかけに68歳で仕事を辞めたとき、コツコツ貯めた預金はおよそ8,000万円に。そこからは悠々自適のセカンドライフが待っているはずでした。
ところが、最近の誠一さんは不安で胸がいっぱいです。
原因はお金のこと。8,000万円あった預金がみるみる減っているというのです。
誠一さんの“派手すぎる”隠居生活
誠一さんは仕事柄、現役時代から同業者や取引関係者との付き合いが多く、ゴルフや会食が日常茶飯事。ところが、仕事を辞めた現在も、彼らとの付き合いは続いていて、頻繁にゴルフに行き、誘われて飲むことも少なくないそうです。そのため、月々の支出は現役時代とさほど変わらず数十万円にものぼります。
一方、誠一さんの収入は月あたり約7万円の基礎年金のみです。こうなると、必然的に貯金を切り崩す生活が続き、貯金はみるみる減っていきます。
とはいえ、誠一さんが誘いを断らないのには理由がありました。
「私だって本当は家でゆっくりしていたいよ。けどね、私が付き合いをやめることで息子に迷惑がかかってしまうかもしれない。それだけはどうしても避けたいんだ」
誠一さんが引退後もゴルフや飲み会に参加し続けているのは、自分が付き合いをやめてしまうと、会社を継いだ息子に迷惑をかけてしまうかもしれないと心配しているからでした。