厚生労働省の調査によると、2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上の「熟年離婚」の割合が統計のある1950年以降最多に。離婚にいたる理由はさまざまですが、子育てや住宅ローンがひと段落したあと、「夫婦2人の生活を楽しもう」と考える夫が多いのに対して、妻側は必ずしも同じ気持ちではないケースもあるようで……。事例をもとに、FPの山﨑裕佳子氏が「熟年離婚」の思わぬ落とし穴とその回避策について解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
離婚しちゃえば?…月収8万円の60歳女性、友人に背中を押され「熟年離婚」を決意→「収入アップ」「持ち家ゲット」に大満足も、2年後に待ち受けていた“後悔の日々”【CFPの助言】
60歳女性が親友に漏らした「夫への不満」
「あら、なんだか元気ないわね、どうしたの?」
昌美さん(仮名・60歳)は、友人の百合子さんに尋ねます。
同い年の2人は、中学生時代からの親友。いまでも半年に1度はランチをしたりお茶をしたりする間柄です。今日のお茶会の場所は、昌美さん宅。百合子さんが「ちょっと聞いてほしいことがあって」と相談を持ち掛け、急遽開催される運びとなりました。
「主人のことなんだけど……2年前に退職してからず~っと家にいるのよ、なんにもせずに」
百合子さんは嫌悪感を顔ににじませ、ポツポツと語りはじめました。
――百合子さんの夫は7歳年上の67歳で、65歳のときに中堅の住宅メーカーを定年退職して以来仕事はしていません。一方、百合子さんはいまも週に3回、スーパーで品出しのパートをしており、月8万円ほどの収入があります。
「朝起きて、私が用意したごはん食べて、新聞読んで、テレビを見るだけの毎日なの。それなのに、私がパートの日でも昼食を準備しておかないと嫌味を言うのよ、ほんとに情けないというか、腹が立つったらないわよ」
溜め込んでいたストレスを吐き出すように、百合子さんは愚痴をこぼします。
しばらく黙って聞いていた昌美さんは、「なるほどね~」とひと口コーヒーを含んだあと、こう言いました。
「いっそ、離婚しちゃえば? 残りの人生、不満ばかりじゃつまらないじゃない。一歩踏み出してみてもいいかもしれないわよ」
45歳のときに離婚をして以来、15年間1人で生活してきた昌美さん。百合子さんは以前から、そんな昌美さんのバイタリティある生き方に憧れていました。
「たしかに住むところさえあれば、なんとかなるかもしれない……」