内閣府によると、65歳以上の単身世帯は増加傾向にあり、今後もその流れは続くと予測されています。高齢者の場合、たとえ十分な資産があっても、予期せぬ壁にぶつかるケースは少なくありません。熟年離婚の末、質素なアパート暮らしを強いられながらも「幸せです」と笑顔で語る66歳男性の事例から、お金だけでは解決できない「おひとりさま問題」についてみていきましょう。山﨑裕佳子CFPが解説します。
後悔はありません…“ボロボロのアパート”の駐車場に停まっている“ピカピカのレクサス”の謎。所有者の年金月7万円・66歳男性が満面の笑みで語った「まさかの真相」【CFPの助言】
“ボロアパート”に停まった高級車の真相
昭和の香り漂う東京の下町、商店街を抜けた先20分ほど歩いたところにある、築50年近い古アパート。実はこちら、あることで近隣住民から注目されています。それは、アパートとは不釣り合いな“ピカピカの白いレクサス”が駐車場に停められていること。オーナーは誰なんだろうと噂されているのです。
そのレクサスのオーナーは、このアパートの住人であるミツルさん(仮名・66歳)です。レクサスは約1年前、このアパートに引っ越してきたのと同時期に購入しました。
ミツルさんは元自動車整備士。2年前までは親から引き継いだ自動車整備工場を営んでいました。父親の代からの固定客もあり、自動車整備工場の経営は順調でした。
しかし、自身が体調を崩したことをきっかけに事業をたたむことを決意。業績好調であったことから第三者承継も比較的スムーズに進み、工場の譲渡金を含めると当時の資産は約3億円になっていました。
そんなミツルさんが、このボロアパートに住んでいるのにはある理由があります。それは昨年のこと、40年連れ添った妻から離婚を言い渡されたことがきっかけでした。
大金を手にし、また仕事も引退したミツルさんは、これからどのようなセカンドライフを過ごそうかワクワクしていたところ、妻から唐突に「これからはわたしも自由に生きていきたい」と言われて離婚届を突き付けられたといいます。
ミツルさんにとっては“寝耳に水”でしたが、長い間苦労をかけた妻の気持ちを尊重して離婚に合意しました。
熟年離婚の現状
令和6年人口動態統計月報年計(概数)の概況によると、令和6年中に離婚した18万5,895組のうち同居期間が20年以上のカップルが占める割合は約22%です。なかでも同居期間が35年以上の離婚率は上昇傾向にあります。
離婚に合意する際、ミツルさんは妻から財産分与の話を受けました。
財産分与は婚姻関係を解消するにあたって夫婦の財産を精算するために行うもので、財産分与には次のような意味が含まれています。
2.離婚後の生活保障
3.離婚の原因をつくったことへの損害賠償の性質
なお、分与の対象となる財産は現金や預貯金のほか家や車など、名義にかかわらず婚姻中に形成した財産のすべてが対象です。また、プラスの財産だけでなく負債やローンなどマイナスの財産も分与の対象となります。