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「良かれと思ったこと」が自立を奪う…過剰介護問題と対策
過剰な介護は、高齢者の自立を妨げ、心身の機能を低下させる危険性をはらんでいます。美穂さんの母・和子さんも、入居から半年でその変化は明らかでした。
「入居前は、杖をついてでも自分で買い物に行ったり、庭の手入れをしたりと、生き生きとしていました。それが今では、すっかり覇気がなくなってしまって……」
施設での生活は、和子さんの行動を制限するものでした。施設側の「安全のため」という配慮は、結果として和子さんの「できること」を奪い、自立心を削いでいきます。美穂さんは、自分が母の自立を奪ってしまったのではないかと、自責の念に駆られました。
厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、要介護者が介護を必要とする主な原因として、「関節疾患」「転倒・骨折」に続いて「高齢による衰弱」が上位に挙げられています。過剰な介護によって身体を動かす機会が減り、心身の機能が低下することは、この「高齢による衰弱」を加速させる一因となりえます。
老人ホームの選び方を誤ったのではないか、なぜもっと事前に確認しなかったのか。美穂さんの後悔は尽きません。過剰介護の問題を避けるためには、入居前に施設と入念に話し合うことが不可欠です。
過剰介護(介護の囲い込み)から家族を守るために
昨今、社会問題になっているのが過剰介護(介護の囲い込み)です。これに対し、入居者自身も「自分の介護は自分で守る」という意識を持つことが大切です。
まず、施設やサービスを人任せにせず、自ら情報を集めて比較検討しましょう。そのうえで、ケアマネジャーには自分の状態や「どう暮らしたいか」という希望を明確に伝え、納得のいくケアプランを一緒に作ってもらうことが大切です。
もし少しでも「囲い込まれているかも」「サービスが過剰ではないか」といった疑問や不安を感じたら、決して抱え込まず、地域包括支援センターや自治体の相談窓口へ速やかに相談することが重要です。
[参考資料]
生命保険文化センター『2024年度 生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)』
厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』