人生100年時代、セカンドライフへの期待が高まる一方で、定年後の夫婦関係には思わぬ落とし穴が潜んでいます。長年連れ添ったパートナーとの「これから」をどう描くかが、豊かな老後の鍵となります。
うっ、ウソだろ…〈退職金2,500万円〉65歳のリタイア夫、定年後は念願のハワイ旅行とウキウキも一転、「結婚37年目の真実」に悶絶 (※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚、他人事ではない!

浩一さんは言います。

 

「妻の不満なんて、まったく気づいていなかったんです。むしろ仲がいいほうだと思っていたくらいで……」

 

ふたりは37年前に結婚し、子どもにも恵まれました。浩一さんは平日は早朝に出勤し、深夜まで仕事。休日は疲れを取るために寝て過ごすことも多くありましたが、「家族の生活を守るために必死だった」と振り返ります。

 

「私は家族のために働くことが与えられた役割だと思ってきました。だからこそ必死だった。それが終わったこれからは、ふたりの時間を大切にしようと思っていたのに」

 

しかし、芳子さんの言い分は違うものでした。

 

「私は家政婦じゃない」

「あなたは家族を言い訳に好き放題やってきただけ」

「あなたは私の人生を考えたことある?」

 

突きつけられた言葉の数々に、浩一さんは頭を抱えました。家族のために必死だったのに、こんなに不満を抱えていたとは。家族のために必死になることは果たして罪なのだろうか――。さらに芳子さんが口にした「俺様ルール」という言葉も、衝撃でした。

 

「朝食は和食がいい。テレビは野球中継が見たい。主婦は昼間は家にいるもの――すべて自分勝手な『俺様ルール』であり、もう付き合いきれないと言われました……」

 

たしかに決まり事のような習慣はありましたが、それは自分だけのわがままだと思ったことはないといいます。

 

「和食は健康のためだったし、テレビだってチャンネルを変えてほしいなら言ってくれればよかった。友達と出かけることも、断っていたなんて知らなかった」

 

厚生労働省『人口動態調査』によると、離婚件数自体は2002年をピークに減少傾向にあるが、同居期間20年以上の熟年離婚は高止まり。結果、離婚件数に占める熟年離婚の割合は増加傾向にある。2020年には過去最高の21.5%を記録した。熟年離婚が高止まりしている理由としては、女性の社会進出や年金分割制度などが挙げられている。

 

「うちは大丈夫」と思っていた浩一さんですが、熟年離婚が他人事ではないことを痛感。サイン済みの離婚届を前に、これまでの結婚生活を振り返ったといいます。

 

「今さら過ぎた37年間をどうこうすることはできないし、私には私の言い分がある。ただ、これから先、現役時代のままではいかないことは、今回の件で痛いほどわかりました」

 

リビングのテーブルの隅には、ハワイのパンフレットがくしゃくしゃになって置いてあるとか。心を入れ替えようとしている浩一さん。近いうちに旅行の話を再開できるよう、芳子さんと対話を続けていこうとしています。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』

厚生労働省『人口動態調査』