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資産1億5,000万円で実現した「完璧なFIRE」
「父は一日中、リビングでスマホを見てダラダラしています。たまに散歩に行くだけです」
都内のマンションで暮らす野村大輔さん(46歳・仮名)は、小学4年生になる10歳のひとり娘・美咲さん(仮名)の絵日記を覗き込み、言葉を失いました。夏休みの宿題として提出されるその紙面には、父親に対する素直で容赦のない「蔑み」が綴られていたのです。
大輔さんは外資系IT企業でシステムエンジニアとして激務をこなし、年収はピーク時で1,400万円に達していました。30代前半から徹底した節約と投資を続けて資金を形成。45歳の時、運用資産が1億5,000万円に達したタイミングで退職し、念願のFIREを果たしました。
毎月の生活費は約35万円。住宅ローンは退職時に一括返済しており、残高はありません。年間600万円程度の配当収入が見込め、贅沢はできませんが、家族3人が暮らすには十分な状況でした。
「会社員時代のストレスから解放され、妻からは『会社を辞めて優しい顔つきになった』と言われました。家族との時間も増えていいことばかりのはずでした」
大輔さんは当時の心境をそう振り返ります。しかし、彼の想定していなかった問題が家庭内で起き始めていました。
大輔さんは退職後、朝、朝食の用意など軽く家事を済ませると、あとは読書や映画鑑賞をして過ごしていました。一方、妻の由香さん(44歳・仮名)はフルタイム勤務を続けており、年収は600万円ほどあります。
日中、家に一人でいる大輔さんの姿は、夏休みに入った娘の目に奇妙に映りました。同級生の父親たちがスーツを着て毎朝出社するなか、自分の父親だけが一日中家にいるからです。
「友だちに『お父さんのお仕事なに?』って聞かれても答えられないの。参観日にも来ないでほしい」
ある日、美咲さんは大輔さんに向かって吐き捨てるように言いました。さらに冒頭の絵日記を発見したことで、大輔さんは自身が娘にとってどのような存在かを突き付けられたのです。「確かに、今まで夜遅くまで働いていたわけだから、一日中家にいるのは奇妙に映るかもね。ちゃんと説明したつもりなんだけど……」と、妻の由香さんは言います。
総務省『労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)平均結果』によると、大輔さん(46歳)と同世代にあたる45〜54歳男性の労働力人口比率は95.4%に達しています。つまり、同年代男性のほとんどが働くか仕事を探しており、大輔さんのような「非労働力人口」はわずか4.6%にすぎません。
同級生の父親たちが皆働いているなかで、自分の父親だけが一日中家にいる――10歳の美咲さんの目に奇妙に映っていたとしても当然なのかもしれません。