マイホームを買ったときから夢見てきた「住宅ローン」からの解放。定年前後にその時を迎える、という人も多いでしょう。しかし「真の解放」とは呼べない事態に直面するケースも珍しくありません。
マイホームなんて買わなきゃよかった…「退職金2,800万円」の元・営業部長、60歳定年直後の絶望。妻が食卓に置いた「7桁の見積書」に言葉を失う (※写真はイメージです/PIXTA)

30年越しの夢……ようやく手にした「何にも縛られない生活」

佐藤健司さん(60歳・仮名)。大卒で入社した中堅機械メーカーの営業部長として身を粉にして働いてきましたが、ついに定年退職の日を迎えました。送別会での部下たちの温かい言葉と花束に、少し気恥ずかしさを覚えつつ、胸は熱くなりました。

 

定年後も契約社員として子会社で働くことが決まっていますが、仕事に対する責任はぐっと軽くなるため、何ともいえない開放的な気持ちにひたっていました。定年と同じタイミングで、住宅ローンの返済からも解放されるのです。

 

30年前に都心から少し離れた郊外に建てた一戸建ては、家族4人の幸せを願ってこだわった注文住宅です。色々とこだわった結果、ずいぶんと高くなった見積もりに息をのんだのも昨日のことのようです。5,000万円を借り入れ、月々15万円の返済。教育費がピークに達したときにはローン負担も重くのしかかり、「心労で痩せました」と笑う佐藤さんですが、いよいよ、すべて払い終えるときが来たのです。

 

「ローンを払っている間は、自分たちの家のようで、そうではないという思いがずっとありました。払い終えたら、正真正銘、私たちの家です」と感慨にふける佐藤さん。

 

退職で手にする退職金は2,800万円。そして生活が苦しいときでも続けてきた貯金が、1,000万円強。年金を受け取るまでの5年間、給与は大きく減りますが、その間もコツコツと貯金を続ければ、もう少し増えるでしょうか。

 

「ようやく肩の荷が下りた。これで老後は安泰です」