何かと心配が絶えない、ひとり暮らしをする高齢の親。知らぬうちにトラブルに直面してることも珍しくありません。何気ない日常に潜むリスクについて見ていきましょう。
何だ、これ!〈年金月16万円〉82歳父が暮らす実家の床下に多すぎる段ボール。一緒に出てきた「ゼロがやたらに多い明細書」に50歳ひとり息子が絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

床下に隠されていた大量の段ボール…その数に絶句

「親父、床下の収納、最近見た? 湿気がこもってカビがスゴイことになっているって、テレビでやっていたぞ」

 

健太郎さんは、あえて普段は開けることのない場所の点検を提案しました。案の定、健太さんは「そこは大丈夫だから」「何も入っていない」と拒みます。その必死な姿に、疑念はさらに深まりました。

 

半ば強引に床下収納の蓋を開けた健太郎さんは、言葉を失いました。そこには段ボール箱、箱、箱。恐る恐る一つを手前に引きずり出してみると、側面にはリビングで見たものとまったく同じ健康食品メーカーのロゴが印刷されていました。さらに箱の隙間に無造作に挟み込まれていた、事務的な茶封筒が目に留まります。中から出てきたのは、何枚にもわたる明細書の束。そこに印字された数字を見た瞬間、健太郎さんの血の気が引きました。

 

「800,000円」「1,250,000円」――。

 

ゼロがやたらに多い請求額。

 

「親父……これ、全部そうなのか?」

 

問い詰める健太郎さんの声に、勝さんはうつむいたまま、か細い声で「ああ……」と答えるます。中身はすべて、高価なサプリメントや栄養ドリンクのセットです。とてもではありませんが、年金月16万円の父が、購入するはずのない金額でした。

 

高齢者を狙った健康食品の販売トラブルは後を絶ちません。特に、高齢者の場合、判断力の低下により、過量であることに本人も気づかないというケースも珍しくありません。

 

消費者庁『令和6年版 消費者白書』によると、高齢者の消費生活相談件数は増加傾向にあり、特に認知症を患っている高齢者本人がトラブルに巻き込まれるケースが増えているとされています。

 

健太郎さんが経緯を聞くと、「最初は親切な人からの電話で、断れなくて……」と勝さん。「1回だけ」と考えていたものの、それが定期購入の契約だったことを、あとで知ります。解約を申し出ても「もう次の分が発送準備に入っている」「解約するなら違約金がかかる」などと言われ、なすすべもなく商品を受け取り、支払いを続けていたのです。

 

公益社団法人日本訪問販売協会は、通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安として、健康食品では「原則、1人が使用する量として1年間に10ヵ月分」としています。

 

*この目安を超えた販売分量が直ちに過量に該当するものと考えるのではない

 

すぐに消費者ホットラインに電話し、地域の消費生活センターへ相談の予約を入れた健太郎さん。問題の解決に向けて動き出したといいます。

 

[参考資料]

消費者庁『令和6年版 消費者白書』

公益社団法人日本訪問販売協会『通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安について』

「通常、過量には当たらないと考えられる分量の目安」について