国家公務員という響きに、安定ややりがいを思い描く人は多いのではないでしょうか。しかし、その舞台裏には、私たちが想像する以上に過酷な現実が広がっています。
もはや限界です…憧れの国家公務員になった28歳女性。入省3日、霞が関で見た「信じがたい光景」に絶望 (※写真はイメージです/PIXTA)

希望を打ち砕く「霞が関の常識」

田中沙織さん(28歳・仮名)のキャリアは、順風満帆に見えました。一度、民間企業に就職。その後、より大きなスケールで仕事がしたいという想いが強くなりました。

 

「もっと大きなフィールドで活躍したい」

 

一念発起した沙織さんは、働きながら猛勉強を重ね、難関とされる国家公務員採用総合職試験に見事合格。配属先は、日本の産業政策を司る、まさに国の中枢。希望に胸を膨らませ、霞が関の門をくぐりました。

 

入省して3日目の夜。時刻は22時を回っていました。日中の研修を終え、配属された課に戻った沙織さんは、目の前の光景に言葉を失いました。定時はとうに過ぎているにもかかわらず、フロアの半数以上の席が埋まっているのです。誰一人として帰る気配はなく、全員が険しい顔でパソコンのモニターを睨みつけていました。

 

先輩職員のデスクには、栄養ドリンクの空き瓶が何本も転がっていました。彼の目の下には、濃い隈が刻まれていました。別の場所では、課長席を囲んで深刻な表情で打ち合わせをするグループがいました。まるで、ここは24時間眠らない戦場のようでした。

 

「噂は本当だったんだ……」

 

人事院が公表した『上限を超えて超過勤務を命ぜられた職員の割合等について(令和5年度)』によると、他律的な業務の比重が高い部署に所属する職員において、4つの上限*のうち、いずれかの上限を超えたのは15.9%、人数にすると約1.2万人。ただ本府省に限ると27.9%と、4人に1人以上の水準にまでなります。

 

*①1ヵ月100時間未満 ②年720時間以下 ③2~6月平均80時間以下 ④月45時間超は年6回まで

本府省(約3.9万人=100%)の場合、①は13.9%、②は12.5%、③は18.7%、④は22.1%

 

ときに不夜城に例えられる霞が関。特に、国会対応や予算編成、法案作成などを担う本府省の多忙さは群を抜いており、「月80時間超」の過労死ラインを超える残業を余儀なくされる職員も少なくありません。沙織さんが感じた「戦場」という表現は、決して大げさなものではなかったのです。