生成AIがビジネスや生活に浸透するなか、その開発・利用コストを劇的に下げる可能性を秘めたAIモデル「DeepSeek」が注目を集めています。AI技術がより身近になることで、製造業におけるヒト型ロボットの導入など、これまで想像の域を出なかった応用が現実味を帯びてきました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の原田哲志氏が、AIの進化がもたらす社会の変化について詳しく解説します。
DeepSeekに見るAIの未来 …近年のAI進化の背景とは (写真はイメージです/PIXTA)

5―終わりに

今後、AI(人工知能)の性能や応用領域はさらに拡大し、私たちの生活や仕事のあらゆる場面に影響を及ぼすと考えられる。すでに製造、小売、医療、金融、エンターテインメントなど多くの分野でAIは実用化されており、その存在感は日に日に増している。

 

かつてコンピューターが登場した際、「人間の仕事が奪われるのではないか」という懸念が広がった。しかし実際には、定型的な作業の一部が自動化された一方で、新たな職業や産業が誕生し、人間はより創造的で戦略的な仕事にシフトしていった。これはAIにも当てはまり、例えばコンピューターグラフィックス、ロボット技術、ビッグデータ分析といった分野では、AIの活用によって新しい価値が創出されている。

 

今後人間に求められるのは、AIを「競争相手」ではなく「協力者」として捉え、積極的に活用していく姿勢である。AIは膨大な情報処理やパターン認識を得意とする一方で、人間が持つ直感や感性、倫理観などには及ばない。AIを活用しつつも、独自の視点や柔軟な発想力を磨くことが、人間としての価値を高める鍵となる。技術の進歩にただ追随するのではなく、人間らしい創意工夫と主体的な姿勢を持つことが、AI時代における最も重要な生き方であると言える。