結婚や子どもの出産を機に、「マイホーム」の購入を検討する人は多いでしょう。実際、総務省の調査によると、日本の持ち家率は約61%と、「持ち家」と「賃貸」の比率では持ち家派のほうが多いのが現状です。しかし、マイホーム購入を機に「思わぬトラブル」に見舞われるケースも少なくないようで……。FP Office株式会社の宮本誠之FPが事例をもとに、その具体的な問題と解決策について解説します。
あら、おかえりなさい…年収700万円の41歳サラリーマン、念願のマイホーム購入から1年で“自宅恐怖症”に。原因は「リビングでくつろぐ69歳・義母」の存在【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

トラブルの解決・予防に役立つ「家族ルール」

住宅ローンを考慮したライフプランの相談に訪れたAさんから上記の話を聞いたFPは、現状を打破するため「家族ルール」の策定を提案しました。

 

ファイナンシャルプランナーである筆者は、日々数多くの家庭の「お金の悩み」をお聞きします。そうしたなかで、Aさんのように話題が「家庭の悩み」に発展するケースは珍しくありません。

 

家族間の問題は、金銭的な問題だけでなく、精神的な健康や夫婦関係にも大きな影響をおよぼします。このような問題を未然に防ぎ、あるいは解決するために重要なのが、明確な「家族ルール」を作ることです。

 

家族ルールとは、家族間での行動規範や取り決めを明文化したもの。これは、家族の絆を壊すことなく個々が尊重され、安心して生活できる環境を築くために不可欠です。「家族ルール」をつくるうえで、重要なポイントは「4つ」あります。

 

1.夫婦間でしっかり話し合う

まず、もっとも重要なのは、夫婦間で現状に対する認識を共有し、どのように改善していきたいかを具体的に話し合うことです。ルールを作成する前に、感情的にならずお互いの気持ちを尊重しながら、冷静に事実を共有しましょう。

 

夫婦が一致団結して問題に取り組む姿勢がなによりも重要です。

 

2.ルールはなるべく「具体的」に

夫婦で問題点のすり合わせを行ったあとは、いよいよ「家族ルール」の作成に移ります。この際、漠然とした表現は避け、なるべく具体的な行動を設定することが大切です。たとえば、以下のような項目を検討するとよいでしょう。

 

訪問に関するルール……「事前連絡なしの訪問は控える」「訪問は週に〇回まで、時間は〇時まで」など。

 

プライベート空間に関するルール……「子ども部屋や夫婦の寝室、書斎など、特定の場所への立ち入りは控える」「個人の持ち物には触れない」など。

 

子育てに関するルール……「最終的な育児方針は夫婦で決定する」「夫婦の意向に反する行動はしない」など。

 

金銭に関するルール……経済的な援助を受けている場合、それが過干渉の引き金になっているのであれば「自立を目指すための具体的な計画を共有する」といったことも検討の余地があります。

 

3.伝える「タイミング」と「伝え方」も重要

「家族ルール」が作成できたら、当事者に共有しましょう。Aさんの場合、義母のDさんに伝えることになりますが、ルールを伝えるタイミングも非常に重要です。本人が感情的になっているときではなく、なるべく落ち着いた雰囲気のなかで、感謝の気持ちを伝えたうえで、現状困惑していることや改善したい点を丁寧に説明しましょう。

 

「いつも助けてくださってありがとうございます。ただ、私たちの生活リズムも安定してきたので、これからはもう少し自分たちでできることを増やしていきたいと考えています」といったように、相手の気持ちを傷つけないよう配慮しながら伝えることが大切です。

 

4.策定後も定期的に見直し、継続的なコミュニケーションをとる

また、ルールを設定したら終わりではありません。状況の変化に合わせて見直したり、運用状況について定期的に話し合ったりすることが重要です。

 

もしルールが守られない場合は、再度丁寧に伝え、理解を求める努力を続けましょう。