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理想は貯蓄1,000万円、現実は100万円未満…深刻化する40歳の経済事情
キャリアにおける迷いや不安は、経済的な側面、特に資産形成の状況と密接に結びついています。前述の通り、多くの40歳が65歳以降も働き続けることを望んでいますが、その根底には深刻な経済的現実が横たわっています。
調査では、「老後の生活資金」について実に75.0%もの人が不安を感じている(「非常に不安」34.7%、「どちらかといえば不安」40.3%)ことが明らかになりました。この漠然とした不安の正体は、理想と現実の間に広がる資産状況の大きな溝によって、より鮮明に浮かび上がります。
今回の調査で最も衝撃的だったのは、20代の頃に思い描いていた理想と、40歳になった現在の貯蓄額との間に存在する、あまりにも大きな乖離です。
「20代のときに想定していた40歳時点の貯蓄額」として最も多かった回答は「1,000万~1,500万円未満」(17.6%)でした。しかし、ふたを開けてみると、「現在の貯蓄額」で最多となったのは「1万~100万円未満」(16.6%)。理想と現実の間に1,000万円以上のギャップが存在するケースが決して少なくないという事実は、現代の40歳が置かれた経済環境の厳しさを雄弁に物語っています。
この乖離はなぜ生じたのでしょうか。
1985年生まれが社会に出た2000年代後半は、リーマンショック後の景気後退期と重なり、いわゆる「就職氷河期」の余波も色濃い時代でした。給与が上がりにくいデフレ経済下で社会人生活をスタートさせ、その後も経済の大きな成長を実感できないままキャリアを重ねてきました。加えて、近年の歴史的な円安や物価高騰が、可処分所得の伸び悩む彼らの家計を直撃していることも想像に難くありません。想定外の支出増や、収入の伸び悩みによって、思い描いていたような資産形成プランが大きく狂ってしまったというのが実情でしょう。
こうした経済状況は、資産運用にも表れています。貯蓄・資産運用の方法(複数回答可)として最も多かったのは「円貯金」(38.6%)であり、「投資信託」(24.9%)、「株式投資」(22.6%)がそれに続きました。依然として現預金での保有を志向する層が厚いことは、リスクを取って積極的に資産を増やすだけの精神的・経済的な余裕がないことの裏返しとも考えられます。
意欲は高いが、道筋が見えない。未来への不安は大きいが、有効な手立てを打てずにいる。老後資金にも強い不安を抱え、現実の資産は理想に遠く及ばない――現代の40歳の等身大の姿です。
[参考資料]