相続をめぐる争いは後を絶ちません。特に、家族も知らなかった「隠し子」など予期せぬ相続人の出現は、円満になるはずだった遺産分割を泥沼の争いに変えることもあります。資産2億円を残して亡くなった大倉ミチオさん(仮名)の事例をもとに、相続トラブルを未然に防ぐための重要なポイントをみていきましょう。山﨑裕佳子FPが解説します。※プライバシー保護のため、登場人物の情報を一部変更しています。
(※写真はイメージです/PIXTA)
あなた、だれ…? 資産2億円・享年79歳の父の葬儀に現れた“自称・娘”に会場パニック→遺産分割協議が「たった30分」で丸く収まったワケ【FPの助言】
葬儀に現れた“謎の女性”に会場騒然
地域では有名な地主で資産家の大倉家。その当主であったミチオさん(仮名)が79歳で逝去しました。家族は妻と子(娘・息子)が2人。子どもはすでに結婚して家を出ています。
遺産は、現預金と有価証券が約5,000万円、不動産(自宅と賃貸用アパート)が約1億5,000万円の総額2億円でした。
ミチオさんは自宅で倒れ入院するも、2ヵ月後に他界。もともと家族仲が良好だったこともあり、心の準備はできていても、通夜、葬儀ではみな涙を流しミチオさんの死を悼みました。
しかし、感傷に浸る間もなく、大倉家は遺産分割の話し合いをする必要がありました。長男が赴任先の海外から葬儀のために帰郷しており、数日後には戻らなければならなかったからです。
家族は葬儀後すぐに遺産分割協議をすることで合意していました。とはいっても、ミチオさんは遺言書をのこしており特に心配はありません。
ところが……。
私にも遺産をもらう権利があるはずですよね…自称・娘の主張
葬儀も終わりに近づいたころ、突如「わたし、ミチオさんの娘です」と名乗る30代くらいの女性が現れたのです。家族、親戚はあっけにとられます。
特にミチオさんの妻は「あなた、だれ……?」と震える声でつぶやきます。
自称・娘は、戸籍謄本を手に「30数年前、わたしの母とミチオさんは2年間お付き合いをしていました。私はミチオさんの娘です。だから私にも遺産をもらう権利があるはずですよね」と主張したのです。
葬儀会場は一気に騒然となりました。