被相続人の増加によって“争族”が増えている

国税庁「相続税の申告実績の概要(令和5年分)」によると、相続税が課税される被相続人数は、2014年の約56万人から2023年には156万人と、10年で約100万人も増加しました。

増加した要因としては、2015年から遺産に関する基礎控除が引き下げられており、従来の「5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)」から「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となったことが大きいでしょう。

また、課税対象の被相続人数が増えるなか、争族の件数も増えています。

司法統計によると、遺産分割事件数は2011年の10,793件から、2023年には13,872件と大幅に増加しています。

争族に発展するケースはさまざまですが、そのなかでも「介護」をきっかけとしたケースが散見されます。

認知症になった父親のため…介護離職した56歳女性

「なによ、まるで私が悪者みたいじゃない!」

父親の死後、長女の里子さん(仮名・56歳)は弟の孝明さん(仮名・54歳)と相続について話し合っている最中、思わずこう叫びました。

里子さんは、81歳の父が認知症の発症を機に自宅での一人暮らしが困難となったことから、介護のために会社を辞めて同居をはじめました。

遠方に住む孝明さんは多忙を理由に介護を手伝わず、姉の里子さんに丸投げ状態です。

一方の里子さんは、弟が関与してこないことをいいことに、介護サービスをフル活用しつつ父親の年金と貯金を切り崩しながら悠々自適な生活を送っていました。

そんな日々が1年ほど続いたころ、父が息を引き取ります。