商品についてヒアリングを行う際、相手が女性ならば本音を引き出すのは簡単ではありません。1万人以上の女性ユーザーにインタビューを実施してきた筆者に「女性に気分よく話してもらう」ための接し方を学んでみましょう。本記事では、「Popteen」「NIKITA」「ar」「SCawaii!」「Ray」などで16年にわたり女性誌編集を手掛けた橋本夏子氏の著書『女性に売れる言葉とデザイン』(フォレスト出版)より一部抜粋・再編集し、女性にインタビューする際に意識したい3つのメソッドについて解説いたします。
女性の購買心理を紐解く「令嬢インタビュー」とは?…1万人以上にヒアリングした編集者が明かす、上手な“本音”の引き出し方 (※写真はイメージです/PIXTA)

心の扉を開くのは、言葉よりも空気感

インタビューの最初の時間は、相手が「これから何を聞かれるんだろう?」と、少なからず緊張しているもの。だからこそ、会場までの案内はスタッフに任せるのではなく、自分でアテンドするのが理想です。特に、「会場まで歩く間」というのは、自然に会話をスタートさせるのにちょうどいいタイミング。

 

たとえば、エレベーターを降りた後など、少し開放的な気分になった瞬間に、こんなふうに軽い話題を振ると、相手の緊張がほぐれやすくなります。

 

「今日はお時間ありがとうございます!お昼時なのにすみません。飴やお菓子も少しご用意していますので」

「今日はお足元の悪い中、ありがとうございます。雨強かったですが、大丈夫でしたでしょうか?」

 

など、どんな些細なことでもいいので、まずは部屋に入る前に気軽な会話から入ることで、「あ、こんな感じの人なら話しやすそうだな」と、少し安心するものです。

 

インタビューは、「いかにリラックスした状態で話してもらえるか」がカギ。だからこそ、最初のアテンドの時間を、コミュニケーションを温める大切なウォーミングアップとして活用していきたいですね。

 

また、女性同士ならアテンド中にこんな会話もおすすめです。「そのバッグ、素敵ですね!春っぽいですね!」など。女性は、「自分が選んだものを褒められるとうれしい」ものです。「あ、褒められた♡おしゃれしてきてよかった!」「私に興味を持ってくれている」と感じると、女性は安心して会話を弾ませやすくなります。

 

ただ、そのときに気をつけたいのが、〝観察している感〞を出さないこと。「そのピアス、素敵ですね!」のように顔まわりを褒めるよりも、バッグや靴など、少し視線が離れたところをさりげなく褒めるのがおすすめです。

 

自然体のまま、心地よい距離感で好意が伝わる。そんなちょっとした一言が、心を開くきっかけになります。

特別扱い感を醸し出す―メソッド2

インタビューを、ただの「意見を聞く場」にしないこと。女性にとって「ブランドに選ばれた特別な時間」だと感じてもらえるかが大切です。

 

「わざわざ専門家が私の意見を聞いてくれている」

「私を尊重してくれている」

 

そう感じると、女性は自然と〝ご機嫌モード〞になり、本音を話しやすくなります。具体的には、次のような姿勢で臨んでみてください。

 

・「今日お会いできるのを、とても楽しみにしていました!」と伝える。

・話をしっかり傾聴し、相槌や感嘆を交えてリアクションする。

・「すごく勉強になります!」とメモを取る姿を見せる。

・「あなたの声を本当に大切にしたいんです」と真剣な想いを届ける。

・「今日の話、ものすごく参考になりました!」と感謝を伝える。

・「またぜひお話を聞かせてくださいね」と次へつなげる一言を添える。

 

こうした一つひとつのやり取りが、「あなたの話には価値がある」というメッセージとして伝わり、女性は「私を大事にしてくれている」とうれしくなり、どんどん心を開いてくれます。

 

インタビューする側は、ブランドや商品について深く理解していて、専門的な知識を持っており、相手より詳しいことが多いものです。なので、その知識がインタビューの場で〝壁〞にならないよう注意したいところです。

 

実際の取材中、相手の言葉に対して思わず「それはちょっと違って…」と正しそうになってしまう場面、ありませんか?そうした瞬間、話していた方が「すみません、間違えちゃいました……」と恐縮してしまい、空気がピリッとしてしまうことも。だからこそ、インタビューでは常に「教えてもらう姿勢」で向き合うことが大切です。