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大学進学は「投資」…ひとり暮らしを認めた夫婦の覚悟
「教育は、最大の投資だと思っていたんです」
東京近郊に住む会社員・森下康弘さん(52歳・仮名)。大手メーカーに勤務し、年収は960万円。決して低い数字ではありませんが、いわゆる「年収1000万円の壁」の手前で、税や社会保険料の負担は軽くありません。
妻の美紀さん(50歳・仮名)は子育てを優先しながらも、長い間パート勤めを行い、家計をバックアップしていきました。10年ほど前に購入した戸建てに夫婦のほか、娘が2人の家族4人暮らし。ローンの返済に年々増えていく教育費。負担は徐々に重くなり、そしてピークに達しようとしています。
長女の結菜さん(18歳・仮名)が第一志望の私立大学の進学が決定入学金と授業料等で120万円……しっかりと準備してきたとはいえ、痛い出費です。これまでとは比べ物にならないほどの出費であったものの、娘の希望が叶ったことへの安堵感のほうが大きかったといいます。
しかし、結菜さんの進学から数ヵ月後、思いもしない展開に。その夜、康弘さんの帰りを待っていたのか、「ただいま」と同時に「お父さん、相談があるの」と結菜さんが神妙な顔をして現れました。嫌な予感がしましたが、その通り。「一人暮らしがしたい」という相談でした。
現在、大学には自宅から通っていますが、ドアツードアで片道2時間ほどかかります。自宅から通えなくはない、そんな微妙な距離。大学入学時にも自宅から通学か、それとも一人暮らしかを話し合い、とりあえず、自宅から通うことになりました。しかし、実際に通い始めると想像以上に大変だった――というわけです。
「往復で4時間だよ。みんなはその分、勉強したり、遊んだり、バイトしたりしているのに――このままだと、大学との往復で、私の大学時代は終わっちゃう」
遊びやバイトはさておき、学生の本分は学問。そこに支障が出るのは本意ではありません。話し合いの末、結菜さんは1人暮らしを始めることになりました。住まいはオートロック付きで、夜でも人通りの多いロケーション。家賃は管理費を含めると9万円と、康弘さんの想定をはるかに超える金額に。しかし、娘の安全のためには仕方がありません。さらに仕送りとして月5万円。それで十分とはいえませんが、結菜さんは「自分の小遣いくらいはバイトするから」といいます。
新たに月14万円の出費。「すべては、結菜のため。教育は最大の投資――」と言い聞かせる、節約の日々が始まりました。