
固定費は社宅住みのときと大して変わらないはずが…
固定資産税などの負担についても確認し、マネープランを立てて65歳にしてマイホームを手にした佐藤さん。契約時、物件価格は1,800万円でしたが、仲介手数料66万円やその他手数料が20万円、引っ越し費用で20万円がかかりました。加えて、新たに購入した家具などの費用と併せて、約2,000万円を使いましたが、まだ1,000万円は手元に残りました。
管理費1万5,000円、修繕積立金は駐車場代を含んで1万5,000円。合わせて3万円と、以前住んでいた社宅の家賃と変わりません。国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」の管理組合向け調査の結果をみても、管理費は単棟型の平均で1万7,214円、修繕積立金は全体の平均で1万3,378円と合わせて3万円程度です。平均額と比較しても妥当な金額でした。年間の固定資産税や車検代など、まとまった出費はあるものの、しばらくは許容範囲だと感じていたようです。
ジワジワ辿る老後破産の道
しかし、新生活には思わぬ落とし穴がありました。最も大きな誤算は食費です。最寄りのスーパーは以前の生活圏よりも物価が高く、一回ごとの差はわずかでも、積もり積もって支出が増加。定年退職前は、忙しさで昼食を抜くこともあった佐藤さんですが、時間に余裕ができたことで、遠出して外食したり、小腹が空いてコンビニで間食を購入したりする機会が増えました。結果として、食費は月に5万円にも膨れ上がってしまいました。
さらに、光熱費も予想以上にかさみました。一人暮らしとはいえ、自宅で過ごす時間が増えたことで、月に5万円程度の出費に。これに車の保険代や娯楽費なども加わり、あっという間に年金だけでは生活費を賄いきれなくなってしまいます。
退職から数年後には、食生活の変化と運動不足がたたり、生活習慣病と診断されてしまいます。これにより医療費の負担が増え、1,000万円あった貯蓄を切り崩す事態に。年間100万円近く貯蓄が減り続け、このままでは75歳で老後破産という現実に直面しかねない状況に、佐藤さんの不安は募るばかりです。