なぜ、母親になった途端にキャリアを諦めるのが当たり前なのでしょうか。女性たちは人生のあらゆる場面で、自分の意欲や能力に蓋をし、「我慢」することを求められがちです。しかし、その根底にある古い価値観や制度に、あなたの人生を委ねる必要はありません。本記事では、伊達有希子氏の著書『夫婦と子ども2人、世帯年収650万円。どうしたら家が買えますか?:マンガでわかる!一生お金に困らないライフプランのつくり方』(大和出版)より、お金とキャリアの呪縛から自由になり、経済的にも精神的にも自立する方法を解説していきます。
「すみません」ばかり言っています…世帯年収650万円・第一線で働いていたバリキャリ妻が“母”になって一変。時短で復職も、職場では〈すぐ帰っちゃう人〉扱いに心痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

夫の転勤…キャリアを諦める妻

夫の転勤があった場合にどうするかという問題もあります。子どもが大きくなれば夫が単身赴任することも増えてきますが、子どもが未就学児の場合は家族全員で転勤先に行くケースが多いものです。東京から大阪へといった転勤でしたら、夫に合わせて自分も勤務先の大阪支社に転勤するということができるかもしれませんが、何度も転勤を繰り返す場合、そのすべてに対応できる可能性は限りなく低いでしょう。

 

「一生懸命仕事をしてきたのに、母になった途端にキャリアを諦めることが当たり前のこととして求められる」「夫の転勤についていかなくてはならず、自分のキャリアや意向は無視される」という不満を抱いていて、相談をなさった方がいました。この方は、結局在宅でも仕事ができるように、資格を取ってFPとしての仕事をしていきたいと考えるに至り、私の開校しているFP養成スクールの門戸を叩いてくれました。

 

今は働き方も多様化し、リモートワークが進んだことで居住地にかかわらずできる仕事も増えてきました。在宅でできる仕事が自分のやりたいことならば、そのスキルを身につけるための勉強にも前向きに取り組むことができるでしょう。

103万円の壁…稼ぐ力がある妻、扶養内で働いてほしい夫

自分の人生のハンドルを自分で握る覚悟を持ち、自分で仕事を始めても新たなモヤモヤに直面する場合もあります。

 

私に相談してくれた方の中には、独立できるスキルがあり、そのスキルを生かした仕事がうまくいきそうになってきたそのタイミングで、夫から「扶養内でやってくれ」と言われた方がいました。仕事は楽しいし、自分には稼ぐ力があるのに、夫の扶養から外れることで、夫の税金がちょっと上がってしまう。そこでそんなことを言われる。「扶養の壁」は大きいのだなと痛感しました。

 

夫からは「どうせ本気で仕事したいわけじゃないだろ」という態度を取られ、周りからは「旦那がいるから好きなことができていいね」なんて言われてしまう。その上、収入格差からくる夫婦の力関係ができあがってしまう。これはおかしなことだと思いませんか!? そもそも、妻だけがお金を「稼ぐのも我慢、使うのも我慢」しなくてはならない理由はどこにあるのでしょうか? いざ仕事をしてみたら妻のほうが夫よりも稼ぐ力があったということも珍しくありません。

 

「扶養の壁」はこれから働こうとしている人には確かに大きい存在かもしれませんが、そもそも制度はいつか変わるものです。それであれば制度に振り回されることなく、たとえ夫の理解が得られなくても、自分のやりたいことをやり貫く強さを持ってください。ライフプランをつくることで、一時的な夫の税金の損得よりも妻の年金の面で将来的にははるかにプラスになること、家計は1人より2人で働いたほうが人生全体のリスクヘッジになることなど、経済的な側面から後押しすることも可能です。

 

何より自分の意志でやりたい仕事をやっていることはお金には代えられない価値がありますよね。ワーママ(ワーキングマザー)にとって、お金の不安とキャリアは深く結びついているということが私自身の経験からも言えるので、だからこそ夢ややりたいことを、時にはお客様よりも真剣に応援する、そんなFPでありたいと思っています。