同期として同じタイミングで定年を迎えたAさんとBさん

AさんとBさんは、同じ会社の同期です。特別親しいというほどではなかったものの、同期で集まる際など、顔を合わせれば近況を話す間柄でした。

人の話に丁寧に耳を傾け皆に好かれていたBさんとは対照的に、Aさんは仕事ができるものの、少々プライドが高い一面を持っていました。Aさんは心のなかで、Bさんのことを煙たく思っていました。

「みんなにいい顔して、労力に見合っているか? 効率を考えないと。だから出世できないんだよ」

Bさん本人にはこのように強がる一方、周囲から好かれているBさんに対して、心の底では「なんでBばかりが周りから好かれているんだ」「ストレスがなさそうでうらやましい」と、嫉妬の念を抱いていました。

そんな2人も、時を同じくして定年退職の時期を迎えます。Aさんが受け取った退職金は2,500万円です。

「長年会社に尽くしてきたんだ。これくらいもらって当然だろう」

Aさんはその金額に満足。しかし、「再雇用」として提示された年収に驚きを隠せませんでした。

勤務先には60歳で定年を迎えて以降、65歳まで再雇用で働く制度が整っています。「どうしてもと言われたら残ってやるか……」と勝手にシナリオを描いていたAさんでしたが、提示された金額は300万円。現役時代の年収の半分以下です。

「たった300万円ぽっち!? ありえない」

役職に就いていたというプライドもあり、Aさんはその数字を受け入れることができませんでした。

「それなら、たっぷり退職金も入ったことだし、妻と旅行に行ったり趣味を楽しんだり、いままで忙しくてできなかったことをやろう」

Aさんは再雇用のオファーを蹴って完全リタイアすることに。65歳の年金受給まで無給となるものの「退職金の一部を投資に回せば大丈夫」と考えてのことでした。