突然裕福に…友人の「秘密」

都内に住むAさんは、同い年の妻と2人暮らしです。趣味を楽しみ、たまには旅行へ。夫婦でのんびりと過ごしています。

元公務員のAさんは、夫婦で月あたり約30万円の年金を受給しています。そのため定年時に受け取った退職金約2,500万円はほぼ手つかずの状況です。また自宅の住宅ローンはすでに完済しており、長男のCさんはすでに結婚して独立。今後の生活にはなんの不安もありませんでした。

また、少額ではありますがつみたてNISAや個別株投資で利益を得ています。

周りにも金融リテラシーの高い友人が多く、「最近このファンドに投資をはじめたんだ」「あの銘柄はどうなった?」といった情報交換も頻繁に行っていました。

友人の“自慢”が気にかかる…

そんなある日のこと。飲み会も終盤に入ったころ、立派な腕時計を身に着けた友人が自慢し始めました。

「みろよこの時計。実はさ、かなり儲かっちゃって……」

聞けば、勢いのある半導体銘柄を信用取引で購入し、レバレッジ効果で大きく利益を増やすことができたと言います。

堅実なAさんは、羨ましいとは思いつつも自分には関係ないと感じ、話を聞き流していました。しかし、そんな態度のAさんに気づいたのか、友人はAさんに向かって言いました。

「いまは半導体が熱いぞ。オレだけじゃない、儲かってる人がたくさんいるんだ」

それからAさんは、この友人の言葉が気にかかり、しばらく悶々とした日々を過ごしていました。

ついに「信用取引」をはじめたAさん

2023年から2024年にかけて、株式市場は勢いがあり、半導体銘柄も例外ではありませんでした。生成AIや自動運転、データセンターの需要増を背景に急伸し、マスコミも「半導体バブル再来か」と騒ぎ立てます。SNSでも、「半導体株で資産が2倍に!」といった投稿が頻繁に見られていました。

商社や自動車といった銘柄を現物で保有していたAさんは、悩んだ末に友人が勧めていた半導体銘柄をこっそり購入してみることに。

友人に勧められた銘柄は、1週間で5%、2週間で10%とみるみる株価が上昇していきます。

「あいつの言うとおりだ! これは良い銘柄を知った」

Aさんの胸は高鳴りました。

短期間で数十万単位の利益がすぐに出る快感によって、しだいに感覚がマヒしていったAさん。ついに「信用取引」に手を出しました。