核家族化が一般的となった昨今、離れて暮らす親とはどのくらいの頻度で顔をあわせていますか? 電話などでは定期的に連絡をとっていても、直接会うとなると、お盆や年末年始、GWなど、年に数回という人も多いのではないでしょうか。76歳母と48歳娘の事例をもとに、離れて暮らす親子のあいだに潜む思わぬリスクと、その回避策をみていきましょう。石川亜希子CFPが解説します。
年金暮らしの私でも払えるのよ…年金月14万円の76歳母から頻繁に届く“怪しいおすそ分け”。不審に思った48歳娘の「アポなし帰省」で判明した〈最悪の事実〉
76歳母から届く“怪しいおすそ分け”に違和感をおぼえた娘
「これ、いる?」
(また来た。なんなのよもう……)
大森優子さん(仮名・48歳)には最近、困っていることがあります。
同い年の夫と中学生の長女と3人で、都内に暮らす優子さん。地方の実家に1人で暮らす母親の佳代さん(仮名・76歳)から、画像付きで「これ、いる?」という連絡が頻繁に届くのです。
実家にはもともとモノが多く、いただきもののタオルや食器などが棚にパンパンにしまわれていました。
思春期のころから、優子さんはそんなわが家の様子をみかねて「ねえ、これいらないでしょ」「使わないなら捨てなよ」と声をかけてきましたが、いつも決まって「1回も使ってないのよ」「もったいないじゃない」と返ってきます。
実家から東京に出てくるときも、出てきたあとも、優子さんは母からたびたびこうした“おすそ分け”をもらってきました。
しかし、最近、「これ、いる?」と聞かれるモノの中身に変化がみられます。
それは、これまで多かった「いただきもの」ではなく、健康食品やサプリ、高そうな化粧品などなど……。連絡だけでは飽き足らず、「とりあえずもらってちょうだい」と大きな段ボールが家に届くことも増えてきました。
「誰からもらったの?」「どこかで買ったの?」と聞いてもらちが明かず、優子さんはしだいに“嫌な予感”をおぼえます。
「お母さんももういい歳だし、ひょっとして認知症になっているのかも……」
このままではいけないと、優子さんは休みを取って、実家に様子を見に行くことにしました。
久々の実家で目にした“衝撃の光景”
新幹線と在来線を乗り継いで久しぶりに訪れた実家は、玄関からリビングまで廊下にびっしり段ボールの山。健康食品やスキンケア用品、どれも新品のまま、封も切られず放置されています。
「……お母さん、これ全部どうしたの?」
怒る気持ちも失せ、青ざめながら母に問いかけると、佳代さんは次のように言いました。
「夜にスマホを見てたら“ポイント倍”って書いてあったから。お得だし買っておこうと思って。だけど、いざ使ってみたら年寄りにはどうも使い勝手が悪くてねえ……毎月届いちゃって困ってるの。これ、いる? 優子に全部あげるわよ。若いから肌にもなじむでしょう」
笑って話す母親に、優子さんは驚きを隠せません。あわてて通帳を見せてもらうと、クレジットカードの引き落とし額は毎月10万円を超えていました。
佳代さんは夫の死後、月14万円の年金で暮らしていますが、それ以外に収入はありません。
「お母さん、このお金、どこから出てきたのよ……」