Aさんが失った「本来もらえるはず」の金額

Aさんの退職金で考えてみましょう。Aさんは勤続37年、分類上「20年超」となります。したがって、退職所得控除と退職所得は下記のとおりです。

〈Aさんの退職所得控除〉

800万円+70万円×(37年-20年)=1,990万円

 

〈Aさんの退職所得〉

(2,500万円-1,990万円)×2分の1=255万円

ここでは詳細を省きますが、課税対象の退職所得が約255万円の場合、所得税と住民税で約42万円となるため、退職金の手取りは2,500万円-42万円=2,458万円となります。

ちなみに、退職所得には社会保険料はかかりません。退職金は年金と並んで老後の生活の基盤という意味合いもあるため、税金面でとても恵まれた制度なのです。

勤続年数は「切り上げ」で計算…退職日が1日違えば手取りは7万円変わる

そして、ここでポイントとなるのは、退職所得控除の計算に係る勤続年数は「切り上げ」であるという点です。

Aさんの場合、仮に会社に相談して退職日を1日延ばし、「37年1日」で退職すれば、退職年数は38年とカウントされることになります。そうすると、退職所得控除と退職所得は下記のとおりです。

〈Aさんの退職所得控除(勤続年数を38年とした場合)〉

800万円+70万円×(38年-20年)=2,060万円

 

〈Aさんの退職所得〉(勤続年数を38年とした場合)

(2,500万円-2,060万円)×2分の1=220万円

この場合、所得税と住民税は約35万円。つまり、退職日を1日ずらしただけで手取りが7万円も変わってきます

退職金を“2度もらう”…Bさんが実践していた「もう1つの裏ワザ」

また、後輩がBさんから教えてもらった退職金の裏ワザはもう1つあります。それは、再雇用で働く際、給与の一部を退職金に回すという方法です。なお、これには会社の許可が必要となります。

再雇用の際の給与が月25万円だとして、そのうちの一部、たとえば5万円を退職金として後払いにしてもらうことができれば、65歳時に退職金300万円が支給されます

60歳で退職金を受け取った際に退職所得控除を利用していたとしても、5年以上空けることにより、再度60歳以降の勤続年数に基づいた退職所得控除を利用することができるのです。

給与の額が多くなるほど税金や社会保険料も高くなるため、毎月の給与の一部を退職時に回すことで、毎月の税金や社会保険料を抑えることができます。

ただし、社会保険料を抑えることによって、将来もらえる厚生年金額が減るという点には注意しましょう。