フランス縦断ツアーに参加した70代夫婦

中島葉子さん(仮名・72歳)は、夫の孝一さん(仮名・74歳)と年に1度、夫婦で海外旅行に行くことをとても楽しみにしていました。

年金受給額は夫婦で月に約35万円と十分で、資産運用もしていたため、経済的にも余裕があります。

また、普段からジムに通い、持病もない葉子さん、体力にもまだまだ自信がありました。

ただし、語学には自信がないため、旅行は添乗員同行のツアーを利用しています。ツアー参加者には同じような夫婦も多く、仲よくなれるのもツアーの楽しみのひとつです。

そんな葉子さん、今年の夏休みにはフランスを訪れていました。10日間かけてフランスを縦断するツアーは、葉子さんにとって念願の旅で、とても楽しいものでした。

しかし、移動が多く、知らず知らずのうちに疲れが溜まっていたのかもしれません。

帰国の前日、なんとパリの街の石畳で転倒してしまい、救急車で病院へ搬送される事態に。

「まさか、自分が……」

今までに感じたことのないような手首の痛さと言葉の通じないなか、付き添ってくれた孝一さんを介して、スマホの翻訳機能でなんとか症状を伝えます。診察を待っている間は不安で心細い時間でしたが、すぐに添乗員さんが駆け付けてくれ、ホッとしました。

案の定、手首は骨折していましたが、すでに帰国日だったため応急処置だけしてもらい、ひとまず手首の激痛に耐えながら、予定どおりの帰国便に乗ることができました。

帰国してすぐ病院に行くと、「骨がずれているので手術が必要」と告げられ、3日間入院しました。そのあとも、リハビリのためしばらく通院しています。

葉子さんを救った“不幸中の幸い”

若いころから何度も海外旅行に行っていた葉子さんでしたが、こんなケガをしたのはもちろん初めてです。

「若いころと同じように動けると思っていてはダメだわ……」

と、自信をなくしてしまいます。

ただ、不幸中の幸いといえることもたくさんありました。

まず、搬送先が公立病院だったため医療費が安く、また、海外旅行保険にも加入していたため、帰国後の入院や通院にかかった費用も含め、自己負担はほとんどありませんでした。

なお、症状によっては、帰国便に搭乗できない場合もあります。

「もし帰国便に乗れなかったら、宿泊先の延長や家族への連絡、追加費用など、考えることが山のようにあったと思います」

予定どおりの便で帰国できたことも、本当に「不幸中の幸い」だったのです。