総務省統計局が5月27日に公表した『住民基本台帳人口移動報告』。2025年4月の日本国内の人口移動は、全体的に前年同月を下回る減少傾向を示しました。市区町村間、都道府県間、都道府県内のいずれの移動者数も落ち込み、「日本人が動かなくなった」という衝撃的なデータが浮き彫りになりました。
日本人だけが「動かない」不穏なデータ…「東京一極集中」に異変、知られざる人口移動の最前線 (※写真はイメージです/PIXTA)

「内向き日本人」と「外向き外国人」…知られざる人口移動の最新状況

総移動者数は68万3,859人。前年同月比で4万3,812人(6.0%)も減少しています。特に、都道府県を越える長距離移動が大きく落ち込み、その数は3万1,356人(7.8%)減の36万8,109人。同じ都道府県内の移動も1万2,456人(3.8%)減の31万5,750人。これらの数字が示すのは、日本人の間に広がる「居住地選択への慎重な姿勢」、そして、社会経済状況の変化がもたらす「閉塞感」かもしれません。

 

日本人移動者数だけを見ると、その減少幅はさらに深刻です。市区町村間移動者は前年同月比で4万9,595人(7.6%)も減少し、都道府県間移動に至っては3万4,627人(9.7%)減という壊滅的な数字を叩き出しています。

 

ところが、この「内向き日本人」とは対照的に、水面下で「活発化」しているのが外国人移動者です。市区町村間移動は5,783人(8.0%)増、都道府県間移動は3,271人(7.9%)増、都道府県内移動も2,512人(8.1%)増と、いずれも明確な増加傾向を示しています。

 

この日本人と外国人における移動動向の「明らかな乖離」は何を意味するのでしょうか。近年の外国人労働者や留学生の増加が背景にあるのは明白。彼らが日本人よりも「柔軟に居住地を変えている」という事実は、日本の労働市場や生活様式に、すでに深く食い込んでいる「外国人住民の存在感」を浮き彫りにしているといえるでしょう。

東京一極集中は「終わりの始まり」か? 大阪圏“独り勝ち”の裏に潜むカラクリ

次に、三大都市圏における人口移動の「異変」をみていきましょう。長らく「一極集中」の象徴だった東京圏にも、ついに「変化の兆し」が見え始めました。

 

2025年4月、東京圏の転入超過数は1万8,378人となり、依然として流入は継続しかし、前年同月の2万3,883人から5,505人も減少しました。特に、日本人移動者においては転入超過数が3,774人減少。「日本人による東京圏への移動の勢いが鈍化している」という事実が明らかになりました。

 

一方、名古屋圏は3,682人の転出超過と、依然として人口流出が止まりません。前年同月からは流出幅が縮小したとはいえ、「地盤沈下」は続いています。

 

そのなかで、唯一気を吐いているのが大阪圏です。2025年4月、3,093人の転入超過となり、前年同月の1,266人から大幅に増加。転入者数自体は減少しているものの、転出者数がそれを上回って大きく減少した結果、転入超過数が増えたという、何とも「いびつな増加」を見せました。そして、この大阪圏の転入超過を牽引しているのが、「大きく増加した外国人移動者」。大阪圏の人口流入は、もはや外国人住民なしには語れない状況になっています。