「夫に先立たれて、こんな生活が待っているなんて…」68歳、年金は月9万円。長年専業主婦の女性が、自営業だった夫の突然の死を機に直面した老後の現実とは? 専業主婦が見落としがちな“収入の落とし穴”と、今からでもできる対策を、FPの三原由紀氏が解説します。
たったこれだけですか?…年金わずか「月9万円」の衝撃。夫急死で急転直下の68歳元専業主婦、待ち受ける困難の老後に恨み節「夫が死んだら、私の老後も死んだ」【FPの助言】
遺族年金の少なさに愕然「月9万円だけじゃ暮らせない」
信夫さんの葬儀も終わり、遺族年金の手続きで年金事務所を訪れた文江さんですが、その金額に驚愕しました。彼女自身の老齢厚生年金10万円との調整が行われ、実際の受給額は年額27万5,000円と言われたからです。つまり、文江さんの年金収入は以下のとおりです。
・老齢基礎年金:82万円/年(月額約6万8,000円)
・老齢厚生年金:10万円/年(月額約8,000円)
・遺族厚生年金:27万5,000円/年(月額約2万3,000円)
合計:119万5,000円/年(月額換算約9万9,000円)
文江さんは、当初、聞き齧った情報から、夫の厚生年金の4分の3の金額と自身の厚生年金を足した金額を受け取れると想定していました。正しくは、遺族厚生年金は、原則として亡くなった人の老齢厚生年金の4分の3が基準となり、受け取る側の厚生年金額によって調整されます。
「年金額が月10万円にも満たないなんて、想像もしていませんでした。貯金もほとんどなくて、働かなきゃ暮らせない。毎日が不安でいっぱいです」
現在は週3回、近所のスーパーでレジの仕事をして月5万円程度を稼ぎ、なんとか生活を維持しています。
専業主婦が見落としがちな「年金リスク」…遺族年金に頼れない時代へ
「夫の年金で老後は安心」そう信じてきた専業主婦にとって、遺族年金の仕組みは落とし穴になりかねません。文江さんのように、夫がフリーランスや自営業の場合、厚生年金の受給額が少なく、その分、遺族年金も少額になる傾向があります。さらに、妻側に厚生年金があると遺族厚生年金との調整が入り、実際に受け取れる額が減るのです。
「自分も年金を納めてきたのに、それが足を引っ張ることになるなんて」と文江さんは憤りを隠しません。
厚労省の最新データ(※) によれば、第3号被保険者(専業主婦など)が受け取る年金額の平均は月5万〜6万円。夫が健在なうちは「夫婦で20万ほどあれば安心」と思えても、ひとたび夫が他界すると、想定していた収入が一気に半減するケースが少なくありません。
文江さんのように、自営業の配偶者の場合、第3号ではなく、第1号被保険者として国民年金保険料を納めていても、老後の年金に頼ることはほぼ不可能と言っても過言ではありません。