人手不足が深刻化する昨今、中小企業における人材獲得は困難を極めています。「コストはかけられない」「内定を出しても辞退されてしまう」「採用してもすぐに辞めてしまう」といった課題を抱えている経営者も多いでしょう。本記事では、菅谷信一氏の著書『動画とAIで変わる最新人材採用術(人材難、採用難を乗り切る新常識!)』(スタンダーズ株式会社)より、採用にかかるコストを極限まで抑え、内定辞退者をゼロにし、入社した人材の短期離職を防ぐ採用戦略について解説していきます。
経費を湯水のように消費…大企業が毎年30人の大学生を採用するのにかかる「桁違いな予算」 (※写真はイメージです/PIXTA)

お金をかけずに、いかに知恵を絞るか

私が「3ゼロ戦略」にこだわる理由は、自らの失敗経験と学びから来ています。特に「コストゼロ」に対する思いは、採用にかかる経費の大きさを経営者の立場で初めて実感したことから生まれたものです。

 

私が日立製作所の関連会社で人事採用を担当していた時は、年間三千万円という莫大な予算を使い、毎年30人の大学生を採用していました。しかし当時は、1人あたり100万円をかけた採用の「価値」を理解せず、その経費を湯水のように消費していたのです。自分で経営を始めて、「1人100万円」という採用費の重さが中小企業にとってどれほどの負担かをようやく痛感しました。100万円、あるいは50万円の採用費でさえも中小企業には非常に大きな経費です。

 

この大切な経営資源をもし「ゼロ」にできるなら、その資金を設備投資や知的投資など、より成長につながるところに充てることができるでしょう。この思いこそが、私が「3ゼロ戦略」の一つである「コストゼロ」に強くこだわる理由のひとつです。

 

脳みそと体に汗はかきますが、お金をかけずに知恵を絞り「ゼロ円採用」を実現しましょう。採用活動でお金を使って一時的な信頼関係が築けたと感じるのは勘違いです。豪華な食事やお酒の費用は浪費に過ぎず、本質的な信頼関係にはつながりません。人材確保で本当に大切なのは、経費をかけず知恵と努力で人材を惹きつけ、定着させることなのです。

 

 

菅谷 信一
株式会社アームズ・エディション 代表取締役