長年、安定した大手企業でキャリアを築き上げてきたミドル・シニア層。その輝かしい経歴からすれば、転職も容易に思えるかもしれません。しかし、現実は目を疑うようなケースが後を絶ちません。信じられない履歴書の作成ミス、横柄な面接態度、的外れな自己PR……。本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、転職市場における厳しい現実と、そこで露呈するミドル・シニア人材の盲点に迫ります。
「肩書はすごいのに仕事ができない」…〈元・大企業部長〉の悲劇。ミドル・シニアたちの痛すぎる転職活動
転職技術が不足しているミドル・シニア
転職活動をしてみたが、うまくいかなかったケース
うまくいかない理由を大きく分ければ、転職技術がないという場合と、求人の要件と求職者のスキルがマッチしなかったということが考えられます。
まず、転職技術とは何かですが、ここでは転職するための情報やノウハウが不足していることを指しています。普段から転職市場を意識することなく過ごしてきた人が、いざ転職活動の場面となっても若手と同じ感覚で“受け身”の転職活動を行っているケースを多く見受けます。求人サイトに登録さえすれば仕事はくると思っている人が非常に多いです。もちろん、それでも話がくる人はいるのですが、紹介するエージェントとしてみると年齢要件は非常に厳しく、マクロで見ればチャンスが少ないのは事実です。
履歴書の時点でやらかしてしまうミドル・シニアの転職活動
また、レジュメの作成から面談までの技術が備わっていないことも挙げられます。例えば、ミドル・シニアのレジュメは、職務経歴が長い分、記載量も増える傾向が見られます。しかし量が多ければよいというものではありません。大事なのは、簡潔に当人のスキルが分かることであり、この点が不明確な人があまりに多いと感じます。自身を表現することもできていません。立派な肩書ではなく、結局、何ができるかが明らかでなければ、採用のしようがありません。
そもそも、レジュメの体裁もなっていないケースは少なくありません。写真の添付の仕方が分からないという人すらいるほどで、履歴書の写真が貼付されていない、貼付されていても曲がって貼り付けられているといった例を実際に見受けます。誤字も多く、これでは最初から勝負になりません。
内容面も、長々と所属部門の記載があるだけという人が多いです。例えば「第2営業部」といわれても第三者からは「何ができるか」はまったく分かりません。あるケースでは、自身のバックグラウンドを説明したかったのだと思いますが、事業所の細かい記載ばかりで、自身についての記載が極めて薄く、ほぼ所属していた会社の「会社案内」になっていました。笑い話のようですが本当にあったことです。要するに履歴書・職務経歴書は「自分の営業資料」であるのに、営業力が全くない資料となっているのです。これでは採用サイドとしては当然、相手にしません。