長年、安定した大手企業でキャリアを築き上げてきたミドル・シニア層。その輝かしい経歴からすれば、転職も容易に思えるかもしれません。しかし、現実は目を疑うようなケースが後を絶ちません。信じられない履歴書の作成ミス、横柄な面接態度、的外れな自己PR……。本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、転職市場における厳しい現実と、そこで露呈するミドル・シニア人材の盲点に迫ります。
「肩書はすごいのに仕事ができない」…〈元・大企業部長〉の悲劇。ミドル・シニアたちの痛すぎる転職活動
経営者が最も多く指摘する「ミドル・シニア転職者」の問題点
受け入れる経営者の立場からすると、疑問を持たざるを得ない行動も多く見られます。下記(ミドル・シニア人材について経営者の方からよく聞く言葉)でも紹介していますが、自分で手を動かさないで「若い人にやってもらおう」とついつい言ってしまう。これではその人を雇用している意味がありません。「外注を使いましょう」と言う。しかし、そんなお金を使ったら雇った意味がないのです。金銭感覚も大手企業時代の感覚でいるので、桁が違うという声もあります。何よりも多く指摘されるのが、スピード感が合わないということ。即決断ができず結論を先延ばしにする。成果が出るのは来期になってからなどです。
必要なのは年齢なりのバリューなのです。当然、これは転職に限りません。そのまま今の会社で雇用される場合も一緒です。実はそのために“ジョブ型”がカギになるのですが、ともかく個人としては、年齢を重ねるごとに上昇する価値を意識して、日々の業務で経験を積み上げていく必要があります。
〈ミドル・シニア人材について経営者の方からよく聞く言葉〉
●肩書はすごいのだけど仕事ができない。
●自分で手を動かさず若い人を使う。
●外注を使うべきと進言してくるがそれでは雇った意味がない。
●投資しろと言うが、投資できるならとっくにしている。できないから知恵を出してほしいと言っているのに……。経営実態を理解できていない。
●金銭感覚がない。平気で無駄遣いをする。大企業じゃないんだよ。
●評論家で実務ができない。一般論を語る。自分の意見がない。質問には曖昧に答える。あげく、前の会社ではと言う。
●すぐに給与が安いという。そんなに稼いでいないでしょう。
●人間関係が重要なのにまわりに溶け込めない。別格と思っているのでは?
●仕事の指示に手間がかかる。何を考えているか分からない。
●いつまでも成果が出ない。聞くと半年後などと答える。
●すぐに行動に出ない。減点主義的な行動をとる。スピード感がない。ロばかり。
●汚れ仕事を嫌う。
●自分の仕事の範囲を制限する。これは自分の仕事でない、専門でないと言う。
●部分最適の話しかしない。全体感がない。
(出所:社会人材コミュニケーションズ)
宮島 忠文
株式会社 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長
小島 明子
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト