長年、安定した大手企業でキャリアを築き上げてきたミドル・シニア層。その輝かしい経歴からすれば、転職も容易に思えるかもしれません。しかし、現実は目を疑うようなケースが後を絶ちません。信じられない履歴書の作成ミス、横柄な面接態度、的外れな自己PR……。本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、転職市場における厳しい現実と、そこで露呈するミドル・シニア人材の盲点に迫ります。
「肩書はすごいのに仕事ができない」…〈元・大企業部長〉の悲劇。ミドル・シニアたちの痛すぎる転職活動
中小企業の面接にやってきた大手企業出身ミドル・シニア
面談においても、基本的なことができない人が多く見受けられます。まさかと思われるかもしれませんが、ふんぞり返っているような人は実際にいるのです。自分が採用される側であるという意識の欠如がそこに表れています。なかには「(自分に)何を頼みたいのか?」と質問した人もいます。これでは、さすがに最初からお断りです。
また、対応力の問題という現実もあります。「ミドル・シニアあるある」としてもよくいわれる話ですが、いきなりその会社の問題点を指摘しようとする人がいます。しかも的確でありません。例えば、「こんな商品では売れない」「この事業の進め方ではうまくいかない」などです。
困りごとがあるから採用する、すなわちその人に解決してもらいたいから採用するのに、まるで他人ごとです。さらに大資本・大人数の組織を前提にした指摘ですので、中堅・中小企業からすればあり得ない提案でしかありません。
先述のように、「どんなことをお手伝いしてもらいたいと考えていますか」と、上から目線で問いかける人もいます。自分に何を求めているかを知りたいという気持ちの表れでもありますが、そうした態度の人間は、採用者から見れば当然お断りです。そもそも募集要件を見れば分かることです。
募集の要件に対して、実力的に追いついていない人も多いといえます。厳しい言い方になりますが、年収の5倍は稼げると自信を持って示せる人でないと、ミドル・シニアの転職は厳しいといえます。それにもかかわらず、ほとんどの人は自身がどのようにして応募する企業の売上に貢献できるのかを具体的に示すことができません。就活の学生でも行っているような応募企業の分析ですらなされていない人を多く見かけます。
採用後も…
せっかく採用されても、短期間で辞めてしまう人もいます。若手・新卒とは違って、こうした人の場合、パフォーマンスを発揮できずに辞めざるを得なくなったというケースがほとんどです。筆者(宮島)も、年齢なりのバリューの出し方が分からず期待に応えることができなかった等の事案を多く見てきています。
レジュメや面談にも共通しますが、肩書は立派だけれど具体的に提供できる役割を説明できない人は少なくありません。もちろんすべての人がそうではないのですが、肩書が上級になるほど具体的な提供できる機能の説明ができなくなる傾向があるように思います。実はこの点では、長く現場にいた人は役割が明確です。例えば窓口で働いている人は提供できる価値が明確で、それだけ即戦力になり得るのです。