早稲田卒・氷河期世代、元ひきこもりの初仕事で認識した、社会から隔離された期間の「本当の痛み」とは? 本記事では、岡本圭太氏の著書『ひきこもり時給2000円』(彩流社)より、同氏の実体験をもとに、社会から断絶したひきこもり生活から、再び社会との繋がりを築く第一歩をみていきます。
早稲田大卒・氷河期世代…31歳男性が時給1000円の「初仕事」で気づいたひきこもり3年間の「高い代償」 ※画像はイメージです/PIXTA

元ひきこもりの「初仕事」

僕が再び働けるようになったのは、30歳の誕生日を半年と2か月ほど過ぎた、2005年の4月のことだった。

 

その時は週3日のアルバイト。火・木・土曜の、1日5時間の仕事だった。いきなり週5日はさすがに大変だったと思うので、週3日からというスタートは、わりに適当なものだったのではないかと今でも思う。その仕事に就けたきっかけは、人からの紹介だった。

 

今でも覚えていること。

 

その仕事の面接は午後の2時からだった。面接は午後からだし、これなら問題なく間に合うだろう。でも念のため早めに起きて、余裕をもって出かけようと思い、夜の布団に入った。

 

だが目が覚めて時計を見たら、時計の針は夕方の5時を指していた。一瞬、僕の心臓は止まりかけた。どうしよう、もう間に合わない。ああ、どうにかして謝らなくちゃ。でもいったいなんて言えばいいんだろう。ああ、もうほんとにどうしよう、急がなきゃ……というところで目が覚めた。パニック状態のまま枕元の時計をのぞきこんだら、時計の針は朝の8時を指していた。

 

僕は面接に遅れる夢を見たのだ。あの時はほんとに死ぬかと思った。たぶん相当に緊張していたのだろう。面接の時間までにはまだ余裕があるから、少しのあいだ二度寝することだってできたのだけど、さすがに恐ろしくてもう眠る気にはなれなかった。その日はずいぶん早めに(不必要なくらいに早く)家を出たことを覚えている。

 

面接に受かり、じつに8年ぶりくらいになる仕事の初日は、やはりかなり緊張した。はたして自分にここの仕事がこなせるのだろうかという不安が強かった。たぶんその前日はあまり眠れなかったんじゃないかと思う。

 

だが、結果からいうと拍子抜けだった。思いのほか仕事が楽だったのである。ちっとも大変じゃなかった。たまたまお客さんの来ない暇な仕事場だったということもあるけれど、思っていたのと違って、あまりにも楽すぎたので逆に戸惑ってしまった。「あれ、こんなんでお金もらっちゃっていいの?」というように。