老後破綻に陥らないための3つの対策

国家公務員として長年勤め、退職金や年金といった収入があるにもかかわらず、退職後の生活が思うようにいかないケースもあります。老後破綻を避けるためには、次の3つの視点からしっかりと対策を講じておくことが重要です。

①家計管理の見直しで「収支バランス」を整える

退職後の家計管理で重要なのは、収入の範囲内で支出を抑えることです。

退職すると現役時代より収入が減少するのが一般的です。そのため、現役時代と同じ感覚で支出を続けていると、あっという間に貯蓄が減ってしまいます。木村さん夫婦も定年退職後に収入がなくなったにもかかわらず、退職前と変わらない生活を続けたうえに、外食や旅行、趣味などにお金を使いました。想定以上のスピードで貯蓄が目減りしていったのです。

まずは、現在の収入源(年金・退職金・再雇用収入など)を正確に把握したうえで、支出の全体像を見直すことが重要です。支出を見直す際には、「ニーズ(必要)」と「ウォンツ(欲求)」に分類し、それぞれに優先順位をつけることがポイントになります。

たとえば、医療費や住居費、食費といった生活に不可欠な支出は「ニーズ」に該当し、優先的に確保すべきです。一方、外食や旅行、趣味などは「ウォンツ」にあたります。ウォンツを完全に削る必要はありませんが、限られた資金のなかで上手にやりくりするには、優先順位を明確にしてメリハリのある支出を心がけることが、老後の安定した生活に直結します。

②60歳以降の「収入の確保」が鍵になる

定年退職後、「もう働かなくていい」と思う方も多いかもしれません。しかし、現実的には年金の受給開始まで数年間の空白期間があり、そのあいだの生活費をすべて貯蓄でまかなうのは大きな負担といえます。そこで重要になるのが、60歳以降も収入を得る手段を持つことです。国家公務員であれば再任用制度の活用によって、定年後も公的年金の受給が開始する65歳まで収入を得ることが可能です。

そうすることで、長年の経験やスキルを公務の場で活かすことができます。もしくは、無理のない範囲でパートタイムや短期の仕事に就くことも、有効な選択肢です。働くことは、経済的な面だけでなく、生活リズムの維持や社会とのつながりを保つという意味でも大きな価値があります。

木村さん夫婦の場合も、公的年金の受給開始まで、夫婦それぞれが月10万円の収入を得ることができれば、61歳から65歳の4年間で必要となる貯蓄の取り崩しは、約1,600万円から約900万円に減少します。 とはいえ、900万円も決して小さくはありません。やはり、暮らしをコンパクトにし、支出を抑える工夫との両輪で考えることが重要です。

③退職金は「計画的に管理する」ことが重要

退職金は老後の生活を支える大切な資金です。一度にまとまった金額が入ってくるため、つい気が大きくなって使い過ぎてしまうケースも少なくありません。しかし、退職金を計画なく使ってしまうと、将来的に資金不足に陥るリスクが高まります。退職金は、「使う」「運用する」「取っておく」といった目的ごとに予算を立てて管理することが重要です。

また、生活費に充てる分についても、年単位で取り崩す計画を立て、「毎月いくらまで使えるのか」という月間予算の設定を行うことで、無駄な出費を防ぐことができます。木村さん夫婦は、退職金3,500万円と貯蓄2,000万円の合計5,500万円の資産を保有していましたが、住宅ローンの繰上げ返済や旅行で、早々に2,000万円を超える支出となりました。

今後の生活を安定させるためには、残りの資産については、生活費や介護・医療費、趣味や旅行費、貯蓄など目的別に分けて管理することをオススメします。できれば、退職前からライフプラン表を作成しておくと、退職金の使い道に対する具体的な指針ができ、安心して生活を送ることができます。