高収入の家庭であっても、定年後、思いがけない資金不足に直面するケースは少なくありません。むしろ高収入の家庭ほど気づきにくい家計の落とし穴があって……。本記事ではAさん夫婦の事例とともに、老後破綻の予兆をCFPの伊藤貴徳氏が深堀りしていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
60代元公務員夫婦、もともと世帯年収は1,200万円・退職金計3,000万円が着金も…「老後資金ゼロ」の謎。露わとなった「原因」に絶句 【CFPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

いまからでもできる!“老後破綻予備軍”の処方箋

A夫婦のように、気づいたときには貯蓄が底をつき、老後資金が足りない……という事態に直面しないために重要なのは「いまからなにができるか」に目を向けることです。

 

老後ビジョンを共有する

老後資金の問題は、夫婦どちらか一方だけが悩んでも解決しません。特に、子どもや親との関係性も絡んでくる今後の生活を考えるなら、家族での対話が不可欠です。

 

・退職後、どこに住むのか?

・子どもへの金銭的支援はいつまで、どこまで?

・介護が必要になったとき、どう備えるのか?

・夫婦でどんな老後を送りたいのか?

 

このような老後のビジョンを共有することで、「なにに備えるべきか」「なにを優先するか」が明確になります。特別な場を設ける必要はありません。夕食後の雑談からでも、ぜひ「お金の未来」について話し合う時間を持ってみてください。

 

お金の安心は「収入」よりも「計画力」で決まる

「収入はそれなりにあるし、きっと大丈夫」「退職金や年金もあるし、なんとかなるだろう」そう思ってきたA夫婦も、気づけば老後資金がほとんど残っていないという現実に直面しました。けれどこれは、決して特別なケースではありません。収入の多さに関係なく、「見えない支出」や「計画のなさ」が、家計をじわじわとむしばむことは誰にでも起こり得ます。老後不安は、「準備をしてこなかった人の問題」ではありません。むしろ、「見えにくい将来に、どう向き合っていくか」の問題です。まずは今日から、できることを一つずつ。

 

・支出を見える化する

・家族と将来について話してみる

・少額からでもお金を育ててみる

 

この小さな一歩が、あなた自身と家族の未来を守る大きな力になります。「お金の不安」は、知識で和らぎます。「老後の安心」は、行動で手に入ります。未来の自分に「ありがとう」といえる日を迎えるために。いまここから、「見えるお金管理」を始めてみませんか?

 

 

伊藤 貴徳

伊藤FPオフィス

代表