トランプ・ショックで全世界に混乱が広がっていますが、投資をしている限り暴落を避けることはできません。そのため、相場の回復を待つことが難しい年金生活者や退職間近の人は、リスク対策をより一層しっかりしなくてはなりません。さもなければ、取り返しのつかない事態に陥る可能性もあります。今回は、定年退職後に「年金プラス10万円」の不労所得獲得を目指して投資に手を出し、老後資金を目減りさせてしまった根岸さんの事例から、年金受給前後の人が投資を検討する際の注意点と対策を、CFPの松田聡子氏が解説します。
投資になんて手を出すんじゃなかった…年金月18万円、資産2,600万円の68歳元会社員が“人気の投資”に1,200万円を投入。「月10万円の不労所得」を夢見るも、悲しい結末へ【CFPの助言】
FPが伝える「老後のお金」を守るための具体策と適切な投資の考え方
根岸さんのようなケースを踏まえ、老後の投資についてファイナンシャルプランナーとしてのアドバイスをお伝えします。
まず、老後の投資の基本的な目的を押さえましょう。それは「インフレから資産を守る」ことと「資産寿命を延ばす」ことです。
老後資金は預貯金だけで持っていると、インフレで実質的な価値が目減りします。また、取り崩すだけだと早く底をつきます。例えば、元金2,000万円から毎月10万円ずつ取り崩すと、運用しなければ約16年で底をつきますが、年利3%で運用しながら取り崩せば約23年持ちます。 適切な投資は資産寿命を延ばすのです。
しかし、根岸さんのケースが示すように、投資には常にリスクが伴います。特に高齢者が投資する際に気をつけるべき原則があります。
第一に「ハイリターンにはハイリスクが伴う」という鉄則です。スワップポイント投資のように「安全で高利回り」と思えるものでも、隠れたリスクがあるものです。リスクとリターンは常にセットだと頭に入れておきましょう。
第二に、投資の基礎知識を学ぶことが重要です。「証券会社の担当者が勧めたから」「友人が成功したから」といった理由だけで投資を始めるのは危険です。自分の判断で投資できるよう、最低限の知識を身につけましょう。
第三に、特に警戒すべき金融商品があります。レバレッジを利用した取引、デリバティブ、信用取引などは、仕組みが複雑で損失が拡大しやすいため、高齢者には特に注意が必要です。原則として「仕組みを理解できないものには投資しない」と心得ましょう。
もし根岸さんのような状況になった場合は、自分の決めたルールで損切りをして、それ以上損失を拡大させないようにします。追加投資で取り戻そうとするのではなく、インフレ率を上回る程度の投資を検討しましょう。NISAを活用して、あまりリスクの高くないバランスファンドに投資するのも一つの方法です。
老後の投資は「守りの姿勢」が基本です。大きな利益を追うのではなく、長い老後を安心して過ごせるよう、堅実な運用を心がけましょう。
松田聡子
CFP®