日に日に大きくなる含み損に眠れぬ夜。不労所得の夢、儚くも散る

しかし、2024年6月から状況は一変します。メキシコの政治不安政策金利の引き下げなどを背景に、メキシコペソの対円レートが急落。7月上旬に1ペソ=9円台だった高値から、8月には7円台まで下落しました。

「投資額1,200万円に対して、含み損がどんどん膨らんでいきました。スワップポイントは入り続けていましたが、メキシコペソがどこまで下がるかわからず、怖くなってしまったんです」

眠れないほどの不安に耐えられなくなった根岸さんは、含み損が約250万円に達した時点で、これ以上の損失を避けるために損切りを決断。為替差損が出る前のスワップポイントは、引き出してあれこれ使ってしまったので、もう手元にはありません。

ずっと続くと思っていた不労所得の夢は儚く消え、さらにコツコツ貯めた老後資金は約1割減ってしまいました。

「年金だけでなんとか暮らせますが、ゆとりある生活とまではいえません。FXの損も若いときなら働いて取り戻せるのに、私のような年寄りではそうもいかない。今となっては諦めるしかありません」

金銭的な損失はもちろん、含み損が膨らむ恐怖を抱えていた時間がとにかく苦痛だったという根岸さん。投資になんて手を出すんじゃなかった……そう後悔しているといいます。