トランプ・ショックで全世界に混乱が広がっていますが、投資をしている限り暴落を避けることはできません。そのため、相場の回復を待つことが難しい年金生活者や退職間近の人は、リスク対策をより一層しっかりしなくてはなりません。さもなければ、取り返しのつかない事態に陥る可能性もあります。今回は、定年退職後に「年金プラス10万円」の不労所得獲得を目指して投資に手を出し、老後資金を目減りさせてしまった根岸さんの事例から、年金受給前後の人が投資を検討する際の注意点と対策を、CFPの松田聡子氏が解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
投資になんて手を出すんじゃなかった…年金月18万円、資産2,600万円の68歳元会社員が“人気の投資”に1,200万円を投入。「月10万円の不労所得」を夢見るも、悲しい結末へ【CFPの助言】
日に日に大きくなる含み損に眠れぬ夜。不労所得の夢、儚くも散る
しかし、2024年6月から状況は一変します。メキシコの政治不安や政策金利の引き下げなどを背景に、メキシコペソの対円レートが急落。7月上旬に1ペソ=9円台だった高値から、8月には7円台まで下落しました。
「投資額1,200万円に対して、含み損がどんどん膨らんでいきました。スワップポイントは入り続けていましたが、メキシコペソがどこまで下がるかわからず、怖くなってしまったんです」
眠れないほどの不安に耐えられなくなった根岸さんは、含み損が約250万円に達した時点で、これ以上の損失を避けるために損切りを決断。為替差損が出る前のスワップポイントは、引き出してあれこれ使ってしまったので、もう手元にはありません。
ずっと続くと思っていた不労所得の夢は儚く消え、さらにコツコツ貯めた老後資金は約1割減ってしまいました。
「年金だけでなんとか暮らせますが、ゆとりある生活とまではいえません。FXの損も若いときなら働いて取り戻せるのに、私のような年寄りではそうもいかない。今となっては諦めるしかありません」
金銭的な損失はもちろん、含み損が膨らむ恐怖を抱えていた時間がとにかく苦痛だったという根岸さん。投資になんて手を出すんじゃなかった……そう後悔しているといいます。