高齢化が進むなか、親の介護問題は大きな課題です。父の介護に続き、母の介護と、介護生活が長期化したり、父も母も介護が必要になるなど、大きな介護負担が一度にのしかかったり。このようなとき、どのような決断が正解だといえるのでしょうか?
もう限界だ…「年金月13万円」60歳元サラリーマン、88歳父と85歳母を残し、初めて実家から出る決意をした絶望的事情 (※写真はイメージです/PIXTA)

介護と仕事の両立が困難に…定年まであと2年というタイミングで退職

定年を迎える2年前に退職を決意した和田隆さん(仮名・60歳)。サラリーマンの夢である早期退職ではなく、介護離職という苦渋の決断でした。

 

未婚の隆さんは、ずっと親子3人で暮らしていました。父・勝利さん(仮名・88歳)は3年ほど前に認知症を発症。主に介護を行っていたのは母・京子さん(仮名・85歳)でしたが、80代半ばとなり、足腰が弱って日常生活に介助が必要となっていました。

 

それまでも介護を手伝ってきた隆さんが、全面的に両親の介護を行うようになりました。しかし、仕事を続けながら介護をするのは容易ではありません。特に、勝利さんは夜中に徘徊することが増え、京子さんは転倒のリスクが高く、目が離せなくなっていたのです。

 

隆さんの仕事にも影響が出始めます。寝不足のまま出社し、会議中にぼんやりしてしまうこともありました。周囲から「大丈夫ですか?」と声をかけられるものの、業務量は変わりません。体力も気力も限界に達し、隆さんは退職を決意。介護に専念することにしたのです。

 

介護には予想以上の出費が伴います。オムツ代や介護用ベッドのレンタル料、訪問介護サービスの自己負担額など、積み重なれば大きな負担となります。自己都合の退職で手にした退職金は約1,000万円。そして勝利さんと京子さん、2人の年金は合わせて月15万円。さらに3人の生活費も合わせると、年金だけではとても足りず、毎月、隆さんの退職金を取り崩すことになります。

 

さらに60歳を迎えた隆さんは、繰上げ受給を選択しました。老齢年金は原則65歳からの受給ですが、60~64歳まで繰り上げて受給することも可能です。ただし、1ヵ月早めるごとに受取額は0.4%減額。最大24%、年金は減額されます

 

*昭和37年4月1日以前生まれの減額率は、0.5%(最大30%)

 

隆さんが仮に60歳まで働いていた場合、厚生年金は約11.9万円、基礎年金と合わせて月18.8万円ほどになる予定でした。しかし、2年早く退職したことで厚生年金は月10.7万円に。介護離職により、年金は月1.2万円の減額となったわけです。さらに60歳から年金受け取りを開始した結果、併給の基礎年金と合わせても月13.3万円程度となりました。

 

それでも3人の年金を合わせると28万円強になります。3人の生活費と両親の介護費用は十分に賄えるようになったのです。