退職まであと1年、14年間コツコツ積み立てた老後資金を確認しようと思った遠藤春夫さん。「毎月分配金が入る素晴らしい商品」と勧められた投資信託に、月10万円ずつ計1,630万円を投じてきました。しかし、取引報告書にはわずか980万円と衝撃の数字が。「これは何かの間違いでは」と焦る遠藤さんに、FPが明かした驚きの真実とは? ファイナンシャルプランナー(FP)の青山創星氏が詳しく解説します。
証券マン「毎月分配金がもらえますよ」…甘い言葉に魅せられた50歳会社員、毎月10万円・計1,630万円を投資。老後資金を着実に増やしているはずだったが…14年後、“衝撃の残高”に唖然「俺はいったい何を信じていたんだ」【FPの助言】
「人生100年時代の資産設計」―遠藤さんの経験から学ぶ、老後資金運用の新たな選択肢
遠藤さんの経験から、私たちが学べる教訓は数多くあります。
毎月分配型投資信託の落とし穴を知ろう
・分配金の中には元本の払い戻し(特別分配金)が含まれていることがある
・積立期間中に分配金を受け取ると複利効果が働かず、資産形成に不利
・高い手数料や信託報酬が長期的に資産を蝕む
老後資金を効率的に運用する方法
・分配金を出さないタイプの投資信託で複利効果を最大化
・必要に応じて「定期売却サービス」を活用して計画的に資金を引き出す
・「定額引き出し」よりも「定率引き出し」のほうが資産の寿命を延ばせる可能性が高い
資産運用の正しい知識を身につけよう
・投資商品の仕組みを理解してから購入
・定期的に資産状況をチェックし、必要に応じて見直す
・基準価額だけでなく純資産総額のレベルや動きにも注意
・専門家(中立的なFPなど)に相談
遠藤さんは、残された980万円の資産を見直し、以下の対策を取りました。
1. 毎月分配型投資信託を解約し、低コストで分配されないバランス型ファンドに切り替え
2. 退職までの1年間、可能な限り追加で積み立てを行う
3. 退職後は運用しながら定期売却サービスを活用して計画的に資金を引き出す
4. NISAも併用して税制優遇を最大限に活用
価格が上昇したときにたくさん売って下落したときに少なく売る「定率引き出し」のほうが「定額引出し」より資産を長持ちさせられるとのことです。しかし、認知・判断能力が低下したときのことを考え、遠藤さんは毎月引出金額が変化する定率引き出しは避けようと思っています。
例えば運用しながら毎月5万円ずつ定額を引き出していくのなら、堅めに利回り5%で見積もっても約27年間(65歳から92歳まで)資産が持ちます。万一のことがあっても国の年金と退職金だけでも最低限の生活はまかなえます。退職金は投資には回さず、預金か日本国債(変動10年)にしておくように勧められました。
「自分で自分の足を食べていたことに気づかなかったなんて! 無知とは怖いことだ。でも、いま気づいてよかった。失敗から学ぶことで、これからの人生をより豊かにできる」と遠藤さんは前向きに考えるようになりました。
あなたも遠藤さんの経験を教訓に、老後資金の運用方法をいま一度見直してみませんか? 人生100年時代、正しい知識と選択が、あなたの老後の安心を支える大きな力となります。
ファイナンシャルプランナー
青山創星