
年金月3万円以下の高齢者…全国で120万人
――昔は、年を取ったらどうなるか、どう生活するかなんて考えもしなかった。年金のことなんて、1ミリも考えていなかったよ。今になったら、最低限のことはしていくべきだったと思うよ
仕事を転々としてきたという中島さん。自分から年金保険料を払うという意識はなく、会社によっては保険料が天引きされていました。その結果、保険料の納付期間は10年を少し超える程度に。元々は年金を受け取ることはできませんでしたが、平成29年8月1日から受給資格期間が10年に短縮されたことで、現在は併給の基礎年金合わせて月3万円ほどの年金を受け取れるようになりました。月々の給与と合わせると16万円ほど。手取りにすると14万円ほど。これで何とか生活できる程度。贅沢は一切できません。
――安い酒をちびちびと飲むくらいしか、人生に楽しみはない。もし足腰が限界で自転車に乗れなくなったら、月3万円で生きていかないといけない……お先真っ暗だよ
厚生労働省によると、厚生年金の受給権者で年金が月3万円に満たないのは0.68%。数にすると10.9万人。さらに満額受給で月7万円弱の基礎年金だけを受け取る人も含めると、合わせて120万人にもなります。
老後、月3万円の生活……もちろん、その分、多くの貯蓄があり、年金に頼らず生きていけるのであれば問題ありません。しかし年金頼りの高齢者は多く、中島さんのように「高齢になっても働かないと生きていけない」と、厳しい現実に直面しているケースも少なくありません。
――今の若い人は賢いから。若いときから老後の心配をしているんだろう。その感覚が少しでも自分にあれば、また違ってきたんだろうな
中島さんを反面教師にするのであれば、現役世代の私たちは、まず公的年金制度への理解を深めることが第一歩。年金制度の仕組みや将来の年金見込額を把握し、早めに備える必要があります。次に進めるべきは、自助努力による資産形成。年金だけでは老後資金は足りないといわれているなか、貯蓄や投資、個人年金などを活用し、将来のための資金を準備することが大切です。
さらに働き方の多様化も検討したいところ。副業や兼業、フリーランスなど、柔軟な働き方をすることで、収入を増やすことができます。もちろん社会保障制度に関心を持ち、制度の維持・改善に向けた議論に参加することも重要です。
[参考資料]