定年後、継続して働ける環境が整いつつあるものの、誰もがそれまでの経験やスキルを活かせる仕事ができるわけではありません。なかには新天地に転職という選択をする人もいるでしょう。しかし、現実はかなり厳しいようです。
ほんと、バカなことをしたもんだ…「退職金2,400万円」新天地を求めて大企業を定年退職した60歳サラリーマン、客からどんなに罵倒されても「居酒屋バイト」を続けるしかないワケ (※写真はイメージです/PIXTA)

定年後も経験やスキルを活かせる仕事をしたい

大手企業を定年退職した吉田浩一さん(仮名・60歳)。同期の大半が定年後に再雇用で契約社員として働くなか、吉田さんは退職の道を選びました。

 

その理由は、定年後の働き方への疑問でした。契約社員になると、給与は大幅減。役職がある人であれば、6~7割程度減額となり、25万~30万円程度になるのはほぼ確実です。さらに仕事内容は、現役社員のフォローが基本。「こんな仕事で給与をもらっていいのか」とさえ思ったといいます。

 

40年近く働き、積み上げてきた経験やスキル。営業一筋で、数々の新規顧客を開拓し、社内でもトップクラスの成績を収めてきた吉田さん。部下を育成し、チームをまとめ上げ、大きなプロジェクトを成功に導いた経験もあります。管理職として、経営層との交渉や、海外企業との取引も経験してきました。

 

そんな吉田さんにとって、定年後の再雇用は、これまでのキャリアを否定されるようなものでした。給与が大きく減るだけでなく、仕事内容もやりがいを感じられないものばかり。長年培ってきた知識や能力を活かすことができず、ただ時間をつぶすだけの毎日を送ることに、吉田さんは耐えられませんでした。「このままでは、自分の存在価値を見失ってしまう」。そう考えた吉田さんは、定年退職を機に、新たな挑戦を決意しました。

 

株式会社パーソル総合研究所『正社員として20年以上勤務した60代の就労実態調査』によると、働く60~64歳のうち、「継続勤務している人」の仕事への満足度は45.4%、「転職者」は51.6%、「パート・アルバイト」は49.0%でした。

 

また継続勤務者の処遇の変化については、「給与・賞与が下がった」が最も多く60.0%。「雇用区分が変わった」が42.7%、「残業が減った」33.3%、「業務の責任範囲が縮小した」32.1%、「人事評価制度の対象外になった」29.9%と続きます。

 

さらに給与ダウンなしの人は、「働くことができていること」が仕事との満足度との相関が高いのに対し、給与ダウンの人は「やってみたかった仕事ができていること」「これまでのキャリアやスキルを活かせていること」」と、仕事内容との相関関係が高いことがわかりました。

 

給与が下がり、さらにキャリアやスキルを活かせないとなると、吉田さんのように新天地を求めても当然といえそうです。