(※写真はイメージです/PIXTA)

契約時に聞いていた入居者と、実際の入居者が異なる。単身で住むと聞いていたのに、いつのまにか二人暮らしをしている……転貸や単身者向けの物件に複数人の入居など、賃貸経営ではよくあるシーンに法的な問題はあるのでしょうか? 本記事では、弁護士が詳しく解説します。

トラブルは一切なし…目をつぶっていて問題はない?

転貸にしても、同居人の増加にしても、少なくとも契約解除して立退訴訟で勝てるかというと、証拠集めの問題や、信頼関係破壊の法理で守られているため、よっぽどの事情がないと難しいというのは前述のとおりです。では、なにもしなくてよいかというと少し話は変わってきます。

 

たとえば、転貸については、そもそも転貸している状況を把握するのが難しいですが、転貸の疑いがあるのに長年放置していると、「転貸を知りながら放置していたことにより、黙示に承諾していた」なんて反論されるケースがあり得ます。

 

「黙示の承諾」というのは法律用語ですが、違法な状態や是正されるべき問題を長期間放置していると、その状態を受け入れ、容認していたと認定されるケースがあるのです。そのため、具体的なケースごとに対応も変わってきますが、よっぽど転貸が疑わしい状況なのであれば、転貸は禁止されていますといった旨の注意喚起の手紙を入れておくなどの対応はしておいたほうがよいです。

 

次に、単身者限定のワンルームで同居人が増えているようなケースでも同様です。裁判で追い出すことはできずとも、契約違反であることを注意喚起しておく必要があります。そもそも単身者限定の物件では、単身者が住む前提で音の問題や、設備等が安全設計されていますので、近隣トラブルが発生するもとになります。そのため、こちらも不審に感じる事情があれば、警告の手紙は入れておくほうがよいでしょう。

 

ここまで説明してきたとおり、賃貸借契約は、軽微な違反があっても解除・立ち退き要求ができない特殊な契約です。もっとも、だからといって軽微な違反を放置しておくと、「大家さん側も違反状態を容認していた」なんて評価されてしまう可能性があります。そのため、解除までできずとも、軽微な違反があればその都度警告しておく必要があります。また、軽微な違反も長期間積み重なれば迷惑行為を理由に立ち退き請求できる可能性が高まるため、軽微な違反も地道に注意し記録しておくようにしましょう。