(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの不動産投資家にとって既存不適格物件は避けるべきものと考えられがちですが、実際には購入を検討しても良い場合があります。本コラムでは、既存不適格物件の定義や違法建築との違い、既存不適格となる主な原因などを解説します。不動産投資をする上で適切な判断ができるようにぜひご覧ください。

不動産投資における既存不適格のリスク

不動産投資において、既存不適格であるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは既存不適格物件のリスクとして以下の5つを解説します。

 

・資産価値の低下

・建て替えや大規模改修の制限

・賃貸経営への影響

・融資の制限

・保険加入の困難さ

 

資産価値の低下

既存不適格物件は現行の建築基準法に適合していないため、資産価値が低下する傾向にあります。既存不適格物件を建て替える際には、現行の法規制に適合させる必要がありますが、従前と同じ規模や用途での再建築が困難になることで、土地の有効活用が制限されます。そもそも、接道義務を満たしていないなどの理由で、再建築不可の場合もあります。

 

接道義務とは

建築基準法で定められた規定で、建築物の敷地は原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないというものです。この条件を満たさない土地は、建築確認が下りず、新たな建物を建てることができません。

 

建て替えや大規模改修の制限

前述した通り、既存不適格物件を建て替える場合、現行の法規制に適合させる必要があります。そのため、従前の建物と同じ規模や用途での建て替えが困難になる可能性があります。

 

例えば、建ぺい率や容積率が変更された場合、建て替え時に元の規模の建物を建てることができません。将来的な不動産活用や価値向上の機会が制限される可能性があり、長期的な投資戦略に影響を与える場合があります。

 

賃貸経営への影響

既存不適格物件であることは賃貸経営にも影響を及ぼす可能性があります。入居者を募集する際に既存不適格物件であることが敬遠される要因となり、空室率の上昇や賃料の低下を招く可能性があります。

 

そのため、賃貸経営者はこれらのリスクを十分に理解した上で、賃借人に対して適切な情報開示と丁寧な説明を行うとともに、建物の維持管理や安全性の確保に注力する必要があります。

 

融資の制限

既存不適格物件は金融機関によって融資を得られない場合があります。たとえ融資が可能であっても、担保価値が低く評価される傾向もあり、融資額や返済期間において希望した条件と異なる可能性も少なくありません。

 

また、融資審査を行う際に建築当時の適法性を証明する書類が必要となります。これらの制約により、投資資金の調達が困難になったり、資金調達コストが増加したりする可能性もあります。

 

保険加入の困難さ

一部の保険会社では、既存不適格物件に対する火災保険などの加入を制限したり、保険料が割高になったりすることもあります。また、新耐震基準を満たしていない旧耐震基準で建築された建物や建物に傾きやひび割れがある場合は、瑕疵保険への加入が困難になる可能性もあります。

 

保険加入の制限は、災害時のリスク管理や資産保護の観点から投資の安全性に影響を与えるため、このように既存不適格物件は保険加入が困難になることを理解しておきましょう。

 

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