(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資を始める際には、物件選びだけでなく法律や規制に関する知識も重要になります。特に「違法建築」や「既存不適格建築」といった用語に関しては、投資家にとってリスクとなり得る要素があるため、これらを理解せずに物件を購入すると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。そこで本コラムでは、不動産投資家が知っておくべき違法建築の基本、既存不適格建築との違い、そして投資の際に注意すべきポイントを解説します。

違法建築と既存不適格建築物の違い

違法建築は、建築時から建築基準法や地域の条例に違反して建てられた建物を指します。安全性や耐久性に問題がある可能性が高く、行政による是正指導や罰則の対象となることがあります。

 

一方、既存不適格建築物は、建築当時は適法だったものの、法改正や都市計画の変更により現行の基準に合致しなくなった建物ですが、既存不適格建築物は違法ではありません。とはいえ、増改築や建て替えの際には現行法令に適合させる必要があります。

 

最大の違いは、違法建築が建築段階から法的に問題があるのに対して、既存不適格建築物は建築時には法令を遵守していた点です。また、違法建築は行政指導の対象となる可能性がありますが、既存不適格建築物はそのまま使用できます。

 

既存不適格建築物について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

 

【関連記事】既存不適格物件は避けるべき?定義や原因、購入しても良い場合を解説

気をつけるべき違法建築のリスクと注意点

(画像:PIXTA)
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違法建築にはリスクや注意点が多く存在します。適切な不動産投資を行うためにも、違法建築の以下のようなリスクや注意点を理解しておきましょう。

 

・入居者や利用者の安全を脅かす恐れがある

・行政指導で取り壊し命令が出される可能性がある

・金融機関からの融資が出づらい

・大規模なリフォームが行えない

・スムーズな売却が困難になり出口戦略への支障が出る

 

入居者や利用者の安全を脅かす恐れがある

違法建築物件は建築基準法や消防法などの安全基準を満たしていないことが多く、入居者や利用者の生命や財産を危険に晒す可能性があります。例えば、耐震性能が不十分であったり、防火設備が適切に設置されていなかったりした場合、地震や火災などの災害時に深刻な被害をもたらす恐れがあります。

 

また、日常的な使用においても、構造上の欠陥や設備の不備により事故が発生するリスクが高まるため、所有者や管理者はこのような安全性の問題に対して、法的責任を問われることもあります。

 

行政指導で取り壊し命令が出される可能性がある

違法建築物件の所有者や管理者は、行政からの是正命令や罰金などの処分を受ける可能性があります。違反の内容や程度によっては、口頭や文書などによる助言や指導、勧告などの行政指導で済む場合もあります。

 

しかし、是正が困難な場合や行政指導を無視した場合、建物の取り壊しを命じられる可能性があります。これらの処分に従わない場合、強制的に取り壊され、費用を請求されることもあるため注意が必要です。

 

金融機関からの融資が出づらい

違法建築は、通常の物件と比較するとローンが組みにくいことがあります。特に近年では、コンプライアンス強化の流れにより、違法建築物件への融資を控える傾向が強まっています。

 

仮に融資が可能な場合でも、違法建築物件が持つリスクを融資条件に反映させるため、通常の物件と比べて融資期間や金利などの条件が厳しくなる可能性もあります。

 

大規模なリフォームが行えない

建築基準法に違反している物件では、建築確認申請が必要な大規模リフォームを実施することができません。リフォーム時に現行の建築基準法に適合させる必要があるためです。小規模な修繕や内装の変更は可能な場合もありますが、構造に関わる改修や大規模な増築は困難です。

 

また、2025年4月に施行される改正建築基準法では、建築確認・検査・審査の対象となる範囲が拡大され、より厳格な審査の対象となる可能性があります。そのため、違法建築物件を所有していると、将来的な改修や用途変更に大きな制限を受けることになります。

 

スムーズな売却が困難になり出口戦略への支障が出る

違法建築は購入希望層が限られていたり、ローンが組みにくかったりといった懸念から、売却が困難になります。

 

多くの買主は安全性や法的リスクを懸念し、購入を避ける傾向にあります。また、金融機関からの融資が得られにくいため、買主は現金で購入してくれる方に限定されてしまいます。

 

また、将来的な法改正や行政指導によって、物件の価値がさらに下落するリスクもあるため、大幅な損失を被る可能性が高く、長期的な資産価値の維持が困難になります。

 

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