多くの人が「老後への不安」を抱える一方で、なかには潤沢な退職金と十分な年金を受け取ることのできる“勝ち組シニア”もいます。しかし、彼ら・彼女らであっても、死ぬまで安心とは決して言い切れません。さまざまな角度からやってくる「老後破綻」のリスクを回避するにはどうすればいいのでしょうか。定年直後の元公務員、松永さん(仮名)の事例をもとに、FPの辻本剛士氏が解説します。
本当に好きだったんです…〈年金月23万円・定年退職金2,500万円〉“世間知らず”な65歳・元公務員男性が「安泰の老後」を奪われた“甘い誘惑”【CFPが解説】
被害額300億円以上…「SNS型ロマンス詐欺」が増えている
「SNS型ロマンス詐欺」とは、SNSなど非対面での連絡手段を用いて相手に恋愛感情や親近感を抱かせ、金銭等をだまし取る詐欺のことです。警視庁の公表した資料によると、SNSロマンス詐欺は昨今増加傾向にあり、令和6(2024)年の被害額は前年同期比+193億円の約346億円にものぼります。
被害額の分布をみると、もっとも多いのは500万円以下ですが、なかには1億円を超える被害に遭う人もいます。
被害者の年齢層をみると40歳以上の被害が多く、今回の秀樹さんのように、特に経済的にゆとりのある高齢者や長期間独身を続けている人も狙われやすい傾向にあります。
ロマンス詐欺の被害者が増えている背景
単身世帯が増加して人とのつながりが希薄となったことで、現代は「孤独感」を感じる人が増えています。こうした背景からSNSを通じて親しくなった相手に対して心を開きやすくなり、詐欺師に狙われるケースが後を絶ちません。
今後も高齢の独身世帯の増加が見込まれるなか、このような詐欺被害はさらに増加する可能性があります。そのため、見知らぬ相手からSNS上で突然連絡が来ても、安易にやり取りをしないことが大切です。
また、仮に連絡を取り合うようになったとしても、相手が少しでもお金を要求してきた場合には、その時点で慎重に判断する必要があります。お金を要求された場合はすぐに対応することはせず、一度冷静になって家族や信頼できる専門家、警察などに相談しましょう。
万が一、すでにお金を振り込んでしまった場合でも、できるだけ早く警察や金融機関に相談すれば被害を最小限に抑えられる可能性があります。
“盤石な老後”を送るはずが、ロマンス詐欺により貯蓄の大半を失ってしまった秀樹さん。失恋とともに、汗水流して働いて得た退職金のほとんどが水の泡となり、大きな虚無感に襲われました。
「どうにかしなければ……」

