ライフスタイルの一つである「FIRE」。実現には十分な資産を築くための時間と労力が必要です。しかし、必ずしも多額の資金が必要とは限らないケースもあって……。本記事ではAさんの事例とともに、FIREの多様な可能性について社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が考察します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
心が満たされています…。33歳・貯金1,000万円でFIRE達成。米はタイ産、鶏肉はブラジル産、住まいは千葉の家賃3万円騒音アパート、訪ねた両親も首をかしげる「あまりに奇怪な暮らしぶり」 【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

必要な資産は3,600万円だが…「貯蓄1,000万円」でFIREを決意したワケ

「早期退職しFIRE、自由な生活を手に入れました!」早期退職という言葉に惹かれ、FIREとはなんぞやと、クリックしました。

 

「経済的自立と早期退職。FIREを実現するには、1年の支出の25倍の金額で資産形成し、毎年の支出額を資産の4%以下に収めると、資産が枯渇しないのか……」Aさんは自分に当てはめて真剣に考えてみました。

 

当時33歳のAさんの貯蓄は1,000万円。一社目在籍中は仕事が忙しく、お金を使う時間すら確保できていなかったため、最低限の生活をしていました。無理をせずとも自然と通帳にお金が残ったのです。有期契約社員になってからも基本的な生活パターンは変わらず。もともと派手なことを好まず、質素倹約な生活が体に合っていたそうです。

 

貯蓄1,000万円でFIREするには…

それでも家賃が月6万円のため、月12万円で生活しているAさんがFIREするには、12万円×12ヵ月×25倍=3,600万円の資産が必要になります。自分にはFIREは無理だと思っていたAさんですが、ふと思いつきました。逆算して1,000万円÷25÷12ヵ月≒3万4,000円、究極の節約を実現させてFIREすればいいじゃないか!と考えたのです。

 

はじめは「FIREしたいから実家に戻らせてくれ」と両親に頼みましたが、「いい大人が働きもせずに実家暮らしなんて」と非難めいた目でみられ、最終的には「うちにそんな余裕はない」と断られてしまいました。しかし、Aさんは少し反対されたくらいでは諦めません。

 

もともとIT会社にいたAさん。PCで月3万円ほどお小遣い稼ぎのようなことをしていました。「副業だけ続けて、3万円内の物件を見つけられれば1,000万円をキープできる。もっと家賃の安いところに引っ越し、3万円をフリーランスとして稼ぐサイドFIREをしよう」と決意します。サイドFIREとは、すべての生活資金を資産運用で確保するのではなく、投資と労働収入とを組み合わせて生活資金を確保する方法です。

 

AさんがサイドFIREをはじめた2015年はいまよりも低金利の時代でしたが、うまい儲け話などには飛びつかず、真面目に投資の勉強と情報収集を行い、堅実な資産防衛を行ってきました。1,000万円の資産を元手に、非課税運用できるNISAとリスク分散の一つとして金投資が主軸です。インデックスファンド中心の長期・分散投資により確実性を高め、サイドFIRE生活を実現することができたといいます。